クイーン:ブダペスト

音楽映画が続く。今度はフレディ・マーキュリー生誕80周年、クイーン結成55周年、コンサート開催40周年記念と銘打ったライブの記録映画。1986年7月27日、ブダペストのネープシュタディオンで撮影。冷戦下、西側ロックバンドとして初の「鉄のカーテン」の向こう側でのパフォーマンスだそうです。
冒頭にブライアン・メイ(「感謝」ロゴのTシャツ!)とロジャー・テイラーの短いコメントがあり、バンドの全盛期だと。確かにライブエイドの翌年、「ザ・マジック・ツアー」の一環で、元気なフレディ・マーキュリーの歌と姿が圧巻だ。4人が揃ったライブはこのあと5回だけというから貴重だ。
もちろんパフォーマンスはお馴染みのヒット揃いでご機嫌。A Kind of Magic、I Want To Break Free が格好良い。8万枚のチケットが完売したそうで、RADIO GA GA、We Will Rock Youも大盛り上がり、エーオもたっぷり。ブライアンのアコースティックギターで、ハンガリーの伝統民謡Tavaszi Szél Vizet Árasztも披露して感動的だ。フレディが練習するシーンがあり、手に発音記号で歌詞を書いていたとか。ペンライトやスマホはなく、アリーナのあちこちで線香花火がパチパチしていてびっくり。
オリジナルはヤーノシュ・ジョムボリャイが監督し、共産主義国家として初となる政府公認のもと、カメラ17台、35mmフィルムで撮影。フィルムは25マイル(約40km)にもなったそうです。たぶん曲はセットリスト通りの順序ではなく、合間にメンバーのオフショットも挟まって楽しい。ドナウ川からボートで現れるパフォーマンスや、フレディが巨大な議事堂をみて「いくら?」とジョークを飛ばしたり、ロジャーがゴーカートでレースしたり。
4Kリマスターはロード・オブ・ザ・リング3部作のピーター・ジャクソンが設立したパーク・ロード・ポスト・プロダクションが担当。音響もオリジナルのマルチトラック録音を新たにリミックスしたとかで、高水準。「ザ・ビートルズ:Get Back」の音声復元も手がけたプロダクションなんですねえ。
クイーン好きの友人たちと、ヒューマントラストシネマ渋谷で特別料金3000円。

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愛し合ってるかい?忌野清志郎が教えてくれた

RCサクセションデビュー56年、亡くなってはや17年!の清志郎から「うけとったもの」を、同級生・三浦友和、喧嘩相手の泉谷しげるらゆかりの人物へのインタビューと貴重な映像ライブラリーでたどる。時系列にかまわずポンポンたたみかける豊富なライブ映像に、とにかく圧倒される。渋谷ゲリラライブ、京都会館、野音、武道館… なんといっても2008年「完全復活祭」の冒頭、無条件に浮き立つ「JUMP」は何度みても落涙もの。
個人的には1981年、大学に入ったばかりで友人に「チケットが1枚浮いちゃったから」と連れて行かれた野音で衝撃を受けた。それって辛い停滞をへて前年に「RHAPSODY」でようやくブレイクし、のりにのっていた時期なんだなあ、とか、1970年代フォーク時代に、もう抜群の歌唱力は完成していたんだなあ、とか、改めて感慨しきり。
お馴染み渋谷陽一のインタビューなどから浮かぶのは、遠慮しないで歌いたいことを歌う、夢は世界平和。いろいろ山谷はあった人だろうけど、このシンプルな言葉が今こそ響く。映画として回顧だけでなく、若い世代が「継いでいく」さまを前面に出したのは、そんなメッセージか。ギターのRei、ドラムスのジェットセイヤ、ベースの休日課長らが健闘した2025年のカバーライブに時間を割いていて、梅津和時が熱心に指導するさまが微笑ましい。よく似た長女・百世の消しゴムハンコ動画も。
監督は2024年「トノバン」が面白かった相原裕美。都立西高出身、元TBSの金平茂紀へのインタビュー場所が西荻3313アナログ天国で、なんだか嬉しかった。盛況の新宿バルト9で2200円。終わって友人との打ち上げも楽し。

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木挽町のあだ討ち

話題の時代劇の劇場公開に滑り込み。2023年に直木賞・山本周五郎賞をダブル受賞した時代ミステリーの大筋を踏襲しつつ、悪所を支える裏方の人生ドラマが染みた原作とはまた違い、「オーシャンズ11」みたいな痛快コンゲームに力点があり、テンポがよくて面白かった。脚本・監督は源孝志。シネコンで。

キャストが魅力的で、仇討ち事件の真相を探る田舎侍・加瀬総一郎の柄本佑が、空腹を利用して懐に飛び込む軽妙な人たらし、その実、義を通し、頭もいいキャラではまり役だ。対する森田座立作者・篠田金治は渡辺謙。ヒトクセあってドスがきいて、いいところをもっていく。忠臣蔵ステージ上でまさかの大芝居、傑作だあ。
ほかにも世間からはみ出した裏方の面々が、菊之助のあだ討ちを成就させようと力を合わせて、個性を発揮。菊之助の父を手にかけた作兵衛の北村一輝が、変幻自在の怪優ぶりで存在感が大きい。負けずにインパクトあるのが女形の衣装方・芳澤ほたるの高橋和也。情の厚い感じで、いい役者になったなあ。木戸芸者・一八は口が達者な瀬戸康史、立師・相良与三郎は格好良く滝藤賢一。無口で腕の良い小道具方・久蔵の正名僕蔵がきっちり終盤のハラハラドキドキ、コメディ要素を盛り上げる。ちょっと考えると芯である本当のあだ討ちの経緯は辻褄が合わないようだけど、演技がいいから気にしません。

仇討ちした菊之助はかわいい長尾謙杜(なにわ男子)、少ない出番に気迫を見せる父は山口馬木也、遠山藩の殿様は野村周平。気丈な母たえ・沢口靖子のシーンは猥雑な江戸と一転、爽やかな風が吹くようです。
雪夜のあだ討ちシーンの小村雪岱みたいな和傘の波とか、黒御簾から見下ろす華やかな舞台とか、映像も素敵。幕切れはさながら白浪5人男の勢揃いで、よくできた作り物への愛着がにじむ。思えば
現代の歌舞伎座元はもっぱら松竹だけど、大ヒット映画「国宝」は東宝、本作は時代劇の東映なんだなあ。企画プロデュースは「探偵はBARにいる」の須藤泰司、ワタナベエンターテインメントの渡辺ミキ。

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ストリート・キングダム

1980年前後のパンクロックシーンを描いた音楽映画。わずか1年だったシリーズライブ、東京ロッカーズの熱気と、その後を描く。カメラマンとして、やがて自主レーベルオーナーとして関わった地引雄一の著書を原作に、宮藤官九郎が脚本を執筆。TOHOシネマズ新宿で。
聴衆が集まり過ぎて、ライブハウスの椅子を外へ出してオールスタンディングを始めるシーンや、レコード会社と話が合わなくてインディーズというものを立ち上げるエピソードが面白い。ここから始ったんだなあ。プレスしたばかりのレコードを抱え、ユーイチ(峯田和伸)とサチ(吉岡里帆)が商店街を走るシーンが爽快だ。
中核となるリザード(劇中ではトカゲ)の若葉竜也がさすがの繊細さで、アップダウンの激しさを見せて魅力的。ザ・スターリン(解剖室)の仲野太賀が、ライブですぐ脱いじゃうけど、理屈っぽくてギャラ交渉もできるエキセントリックさを存分に。ダンスミュージックをやると語るフリクション(軋轢)の間宮祥太朗がカッコよく、ロフト店長の渡辺大知、うるさいライターの浜野謙太がちょい役なのに存在感を発揮する。エンディングの峯田の歌唱が当然ながら秀逸。
田口モトロヲ監督はもっさり感じて、やっぱり苦手だけど。あとで三軒茶屋散歩していて、ロケ地のレコード屋FUJIYAMAを見つけた時はなんだか嬉しかった。

 

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