ザ・コミットメンツ
昨夏の思い出、ダブリンが舞台の映画をDVDで。7月末に亡くなったアラン・パーカー監督作。「ミッドナイト・エクスプレス」「ミシシッピー・バーニング」と社会派で怖いイメージだったけど、「フェーム」とか音楽作品もあって、本作はその系譜ですね。
さして取り柄もない若者がソウルバンドを結成し、地元記者とかにちょっと注目されるけど、喧嘩別れしちゃう、というだけの、青春群像ドラマなんだけど、とにかくお下劣、単細胞なやり取りが、なんだか微笑ましくて切ない。いい映画です。
主要なバンドメンバーは、膨大なオーディションで選んだという地元ミュージシャンだけあって、まずモータウンサウンドのライブシーンがご機嫌。ストーリーでも鍵になるウィルソン・ピケットの「ムスタングサリー」やらアル・グリーン「テイク・ミー・トゥ・ザ・リヴァー」やら… 太っちょヴォーカルのアンドリュー・ストロング(10代には見えません)がエモーショナルだし、女性コーラス(必ず3人!)のアンジェリナ・ボールも色っぽい。
演技は素人だからこそ、ドキュメンタリー風になる。ミュージシャンだけど歌わずに主役のマネジャーを演じたロバート・アーキンズが、雰囲気があって実にいい。2代目ドラマーのディヴ・フェネガンは、素顔も役そのままの暴れん坊みたいだし(おまけのメイキング映像で、オーディションなのに監督に食ってかかる意味不明シーンが傑作!) ほかに虚実入り交じった曲者ベテラントランペッターにジョニー・マーフィー。
もちろんただの青春音楽ストーリーではありません。背景にある、ダサくて貧しい街の雰囲気が、絶妙の深みになっている。さすがアラン・パーカー。1991年公開だから、90年代半ばからの「ケルトの虎」と呼ばれたアイルランド成長期の前なんですねえ。
行き場もなく、そのへんの空き地で飛んだり跳ねたりしている大勢の子どもたち、失業給付の長蛇の列。なぜソウルをやるのかと聴かれて、マネジャーは「俺たちはヨーロッパの黒人だ」と答える。労働者階級の閉塞感と大量のビールが、ソウルに命を吹き込んでました。
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