鬼滅の刃 無限列車編

ついに観ました「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」。興行収入300億突破で日本歴代1位となった大ヒットを、アニメの再放送で予習して。原作吾峠呼世晴、プロデューサー高橋祐馬ら、ufotable(ユーフォーテーブル)脚本、外崎春雄監督。

うなされそうな鬼の造形の恐ろしさとか、人食いの残虐シーンとかは、アニメでだいぶ免疫ができていて、緻密すぎる絵の美しさ、炭治郎の無私の優しさが際立つ。
アニメで感心した「生まれながらの鬼はおらず、死に瀕して贖罪の思いを抱く」という、王道ジャンプを超える「救済」の要素は健在。加えて、煉獄さんの母から受け継いだ壮絶な使命感、後進に希望を託して笑いながら力尽きる姿に、前評判通り、思わず涙。不死身でないからこそのヒーロー。
畳み掛ける「全集中」の迫力と、キャラの過去に迫る静かな回想シーンとの、緩急のリズムが感情を揺さぶるのは、音響がいい劇場ならではですね。日輪の耳飾りがヒラヒラするとか、細部の動きも目を引く。

鬼の仕掛ける罠が、「夢の世界への逃避」という設定は、人間心理の闇を突きつけて、相変わらず深いなあ。そして炭治郎の無意識領域の、ウニ塩湖並みに広々と曇りない風景、ラスト煉獄さんを失ったときの大粒の涙が、胸に染みる。
ストーリーとしては完結したコミックス23巻中、8巻の途中までしか描いておらず、伏線だらけ。まだまだ楽しめそうです…

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スパイの妻

知人がプロデューサーを務め、ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を獲得した話題作をシネコンで鑑賞。ヒッチコックのような上質のサスペンスで映画らしい感興に富み、2時間近くを全く長く感じさせない。
何と言ってもヒロイン蒼井優の、振れ幅の大きい演技が素晴らしかった! 黒沢清監督、濱口竜介・野原位・黒沢脚本によるNHK8Kドラマの劇場版。

1940年、貿易会社を経営する優作(高橋一生)は、仕事で甥の文雄(坂東龍汰)と満州に渡り、謎の女(玄理)を連れて帰国、有馬温泉に仕事を世話する。疑心暗鬼の末に真意を知った妻の聡子(蒼井優)は、大きな決断をして…。大戦前夜の港町神戸、六甲に立つ洋館のレトロモダンな雰囲気と、クラシックなセリフ回しがまず端正だ。よくぞここまで作り込んだなあ。

これは聡子が「閉じ込められたところ」から出てくる物語だ。箱から、病院から、そして山の手の奥様という平穏で贅沢な暮らしから。それにつれ、顔つきがどんどん変わっていく。秘密のフィルムを見つめる目の恐怖、覚悟を決めてオープンカーで森を疾走するシーンの開放感。可愛いだけの人形だったのに、夫のためには犠牲をいとわない、険しくも美しい女性へ。なんと鮮やかな変貌だろう。
対する優作は三つ揃いを着こなし、視野が広くて文化を愛するコスモポリタン。底が知れず、人を食った感じを演じたらピカイチの高橋が、最高のはまり役で惚れ惚れさせる。二人の二転三転する関係に的を絞ったストーリーだけに、蒼井・高橋コンビの演技力が光る。2人とも仕事の選び方が巧すぎ。加えて、夫婦を追い詰める憲兵分隊長・津森の東出昌大が、平板なんだけど狂気をはらんでゾクゾクさせる。

もちろん洒落た調度から印象的な音響まで、細部の作り込みも抜かりない。さらに映画(9.5ミリ「パテ・ベビー」とフィルム)がどんでん返しの重要な小道具になっているのが、とても洒落ている。実は「活動写真」や弁士の始まりは、神戸の鉄砲商なんだとか。素人映画にかぶさる「ショウボート」主題歌(脳天気なアメリカ!)や、夫婦が観に行く「河内山宗俊」(夭折した山中貞雄へのオマージュ)、そして金庫、アンティークなチェス盤から浜辺まで、随所に映画的感興があって楽しい。いやー、「お見事です」。

 

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劇場

又吉直樹の2017年の長編を、盤石の蓬莱竜太脚本、行定勲監督で映画化。主演の山崎賢人、松岡茉優の切なさが素晴らしい。
コロナで4月公開が延期となり、配給を松竹・アニプレックスから吉本興業に切り替えたうえで、7月に公開と同時にAmazonプライムビデオで世界同時配信に踏み切って話題となった。その配信で鑑賞してみた。

ストーリーはお馴染み下北沢が舞台。小劇場の劇団で戯曲を書く永田(山崎)と、服飾専門学校に通いながら女優を夢見る沙希ちゃん(松岡)の青春の恋と挫折。
山崎の面倒くさ過ぎる自意識、理屈っぽさと才能に対する強烈なコンプレックス、松岡の可愛さ、健気さは、まるっきり昭和の私小説。だけど役者2人の文句なしの色気、そしてラストの舞台につながる演出が見事だった。曽我部恵一のギターも染みます。
劇団仲間に顔立ちがはっきりしている寛一郎(佐藤浩市の息子さん)、何かと気にかける元劇団員でライターの青山にハスキーな伊藤沙莉。才能あふれる劇作家にKingGnuのボーカル、井口理がちょこっと登場し、劇場の観客でなぜかケラさん、吹越満らも(本人役)。

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