この世界の片隅に
こうの史代の漫画を片渕須直の監督・脚本、MAPPA制作で、一部クラウドファンディングによりアニメ化。63館から500館近く、1100日以上のロングランヒットを記録し、2016年度キネ旬1位となった名作を、ようやく戦後75年の夏に録画で。泣いた~
広島に育ち、1944年に18歳で呉に嫁ぐすずの、おっとりして夢見がちな、しかし芯の強いキャラ造形が素晴らしい。声優ののんもぴったり。しっかり者の小姑にずけずけ言われながらも、受け入れられ、不自由な戦中をたくましく生き抜く。かなわない幼馴染との恋、不思議な縁の夫とのすれ違い、いたわりあい。
漂うたんぽぽの綿毛やトンボなどの細部、夢見がちなすずの想像力が羽ばたく海のうさぎ、恐ろしいはずの着色弾の色彩などが美しい。それだけに戦禍はむごく、不穏な世界情勢とあいまって胸が締め付けられる。
しかしその先にも庶民の日常はあり、孤児との触れ合いには涙涙。のんびりした運びのなかに語られないエピソードがしのばせてあったり、玉音放送の直後のすずの慟哭で植民地支配に触れていたりと、なかなか一筋縄でいかない作品のようです。
公共ホールなど国内450カ所、60以上の国・地域でも上映。音楽はコトリンゴ。
最近のコメント