「チョコレートの兵隊さん」「ドレスにかくされた秘密」「マカッチャン夫人」「アメリアのクローゼット」

番外編で「キネコ国際映画祭2017」。25周年を迎える子供映画祭に初めて足を運んでみた。椅子が大きくて快適なシネコンの、109シネマズ二子玉川で。会場周辺はスポンサー企業による撮影やら紙芝居やら、ワークショップテントが並び、レッド―カーペットもあって親子連れで大賑わいだ。

上映作には人気のアニメなどもあるけれど、グランプリノミネートの作品は子供が主役とはいえ、なかなか歯ごたえがある内容。Cプログラムの短編4作を鑑賞した。1本が20分程度で、「ライブ・シネマ」と呼ぶ声優がスクリーン袖に立って、生で吹替をするスタイルだ。

「チョコレートの兵隊さん」はアメリカのジャクソン・スミス監督。第二次大戦末期のドイツで、不自由な疎開暮らしの少女が若いアメリカの兵士と心を通わす実話。
これに比べると、続く「ドレスにかくされた秘密」はかなりシニカルで見ごたえがあった。台湾の女流オン・チ・イ監督。余白があり、詩情豊かな映像で、暮らし向きの違う2人の少女の可愛らしい友情と、その破綻を描く。貧しい祖母の家で暮らす少女が、お洒落な教師に自分を捨てた母を重ねる思いが悲しい。目の演技が印象的な主演のローズ・ユと監督が来日していて、会場の質問に答えてました。山田祐子訳。

後半の「マカッチャン夫人」はオーストラリアのジョン・シーディ監督。お茶目でテンポがあり、タッチは「ドレス…」と正反対ながら、同様に起伏があった。性同一性障害で女の子姿を選択したトムは、周囲の好奇の目に挫けかけるが、級友トリバーの励ましで勇気を得る。ファンキーなトリバーの母や、理解ある周囲の大人が微笑ましく、風船一杯のダンスパーティーシーンが楽しい。泣けた~
最後の「アメリアのクローゼット」はアメリカのハリマ・ルーカス監督。黒人少女アメリアはいじめの仕返しに、級友の持ち物を盗んでいたが、父に諭されて…
4本のうち3本で両親が一緒にいないというのが、世界共有の現実なのかも。

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夜に生きる リブ・バイナイト

「ミスティック・リバー」のデニス・ルヘイン原作によるギャング映画。監督・主演のベン・アフレックが格好良すぎとはいえ、「ゴッドファーザー」風の大河ドラマ感と、禁酒法時代末期の米キューバ関係がよくわかって、かなり面白かった。機内で。

ボストンで暮らすアイルランド系のジョー(アフレック)は、警察幹部の父に反発してチンピラになり、ボスの女(シエナ・ミラーがはすっぱに)との命がけの恋がもとで、アイルランド系と対立するイタリアマフィアに身を投じる。フロリダ州タンパでラム酒密造ビジネスを任され、パートナーのキューバ女性(背中が綺麗なゾーイ・サルダナ)と運命的な恋に落ちつつ、ギャングとして成り上がっていく。
対KKK抗争、カジノ計画を巡るプロテスタント教会との摩擦をへて、大詰め、実力者となったジョーを排除しようとするボスとの、最終決戦に乗り込んでいくところは、お約束のヤクザ映画路線で痛快だ。

派手なドンパチ、暴力やロマンスがたっぷり。「アンタッチャブル」でお馴染みハットにキャデラックというダンディーさに、フロリダのラテンな空気も加わって格好いい。並行して、ジョーはハリウッドで夢破れた少女(エル・ファニング)の過酷な運命や、複雑な人種差別、事実上アメリカ支配下にあるキューバの状況にも心を寄せる。そういう社会派ドラマの要素が加わり、ラストには哀愁も漂う。さすがの上級エンタメ!といえましょう。
原作の映画化権を買ったディカプリオが製作。

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素晴らしきかな、人生 コラテラル・ビューティー

過酷な運命を受け入れ、生きていくことを描いた大人のファンタジー。ウィル・スミス、ケイト・ウィンスレット主演、「プラダを着た悪魔」のデヴィッド・フランケル監督。機内で。

ニューヨークのやり手広告マン(スミスが意外に渋い演技)は、幼い娘の死に直面して生活が一変、深刻な無気力に陥ってしまう。同僚のエドワード・ノートン(知的で屈折した造形がはまってる)、ウィンスレット、マイケル・ペーニャは、事務所を守るため辛い決断をして、探偵と小劇団の俳優たち(キーラ・ナイトレイ、ヘレン・ミレンら)に依頼し、ひと芝居うつが…

セントラルパークやブルックリンを背景に、静かながら意外性のある、なかなか凝ったドラマに仕上がっている。芝居を仕組んだはずの同僚たちも、それぞれ俳優に影響されて人生を変える一歩を踏み出すし、スミスが救いを求めるグループカウンセリングの主催者(ナオミ・ハリス)が誰だったのかを知って驚く。そして大詰め、俳優たちの正体にまたびっくり。

原題は「幸せのおまけ」の意味で、時に理不尽な悲劇は避けられないけれど、その後に遭遇するささやかな幸せを見逃さないで、という俳優の言葉からきている。苦くて現実的な、大人の人生訓。スミスがずっと熱中しているドミノの、壮麗なのに、あっさりと崩壊しちゃう姿が象徴的で巧い。崩れても生きている限り、また築くしかないのだ。
邦題が共通する1944年フランク・キャプラ映画とは、原題が違うから無関係なんだろうけど、イブの設定とか、ちょっと通じる要素があるのかな。

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君の名は。

2016年最大のヒット作を劇場で。新海誠脚本・監督の長編アニメで、高校生の切ないラブストーリー。企画・プロデュースは川村元気。
2008年に観た「秒速5センチメートル」から変わらない、驚異的に美しい映像は期待通り。東京・四谷、そして飛騨の様々な風景から、つややかな組紐まで。「ロケ地」巡りが流行るほどのリアルさが、ハリウッドの派手で安易なゲーム風CGを凌駕し、丁寧な作り込みの力を見せつける。

都会に住む男子高校生・瀧(神木隆之介)と、田舎の女子高校・三葉(上白石萌音)が時折、眠っている間に入れ替わり始める。前半は1982年の名作「転校生」風のコメディで、若いふたりの戸惑いと、徐々に心が通い合っていくさまが可愛らしい。スマホで情報を共有していくのが、いまどき。
後半は雰囲気が変わって、意外にも理不尽な大規模災害と、必死に大事な人を救おうともがく怒涛のスペクタクル。そしてパラレルワールドを経て、ラストの抒情がジンとさせる。

強引に泣かせる展開はなく、随所に散りばめられた、ちりちりする感情が巧い。繰り返される扉が閉まるシーンは、観る者に思い通りにならない現実を突きつけるし、「お前は誰だ」という問いは、入れ替わりを表すと同時に、青春期の惑いを想起させる。親しいはずの人の名前がぱっと出てこないもどかしさは、大人になってから思い出そうとする、幼い日々の記憶に重なる。それでも大事な人には必ず、たどり着けるのだ。

神木が切なく、瀧のバイト先の先輩・奥寺さんの長澤まさみもいい味。ロックバンド「RADWIMPS」の楽曲が染みる。巫女シーンの振付は中村壱太郎。

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シン・ゴジラ

話題の12年ぶり和製ゴジラを、「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明総監督・脚本、「進撃の巨人」の樋口真嗣監督・特技監督で。徹底して細かく、かつドライな味わいが、古風でいい。ゲームとファンタジーが幅を利かすハリウッドCGとは明確に一線を画し、安直な庶民の人間ドラマも一切排除した、危機管理シミュレーション映画だ。劇場で。

巨大で、急速に進化する「完全生物」ゴジラが突如、東京に出現。拡散を恐れた米国の主導で、国連多国籍軍は日本への核攻撃を決議する。これを何とか回避しようと、若い政治家(長谷川博己、竹野内豊、松尾諭)と官僚(高良健吾)、米大統領特使(石原さとみ)らは、ゴジラ出現を予見した学者(岡本喜八=写真)の遺稿を解読し、決死の「ヤシオリ作戦」を断行する…

なんといっても、情報をぎっしり詰め込んだ作り込みが見事だ。早口でまくしたてていた元素変換とか極限環境微生物って? ちらっと出ていた人物や組織の背景は? 消化不良というより、もう一度見たい、ディテールを語り合いたい、自分でスピンアウトを作りたい、と思わせちゃう。まさに王道カルト。

古めかしいタイトルデザインやサントラは、反核メッセージをこめたという1954年の第一作を彷彿とさせ、骨太のイメージを盛り上げる。ゴジラという存在は、何も意思表示せず、街を破壊しながら、ただ歩くだけ。駆け引き無しの不気味さが、危機に瀕した人間たちの無力加減を際立たせる。

主要登場人物の造形は、なかなか一筋縄でいかない。若い長谷川らは使命感に燃えて格好いい一方、鼻持ちならないエリートでもあり、権力への野心を隠さない。高齢の政治家たち(大杉漣、柄本明、余貴美子、平泉成)は、想定外続きの事態に対処できず、情けない一方で、大詰めでは意外に決断力、行動力を発揮して頼りになる。決して単純な二分法ではない。

シンプルに「いい役」なのは、長谷川率いる「巨災対」のメンバー(津田寛治、高橋一生、塚本晋也、そしてリケジョの市川実日子)か。各官庁のはみ出し者たちが、偏った専門知識と前例無視の言動で大活躍する、という設定は、オタク心をくすぐり、痛快だ。リアルな会議風景なども、二マリとさせる。

それにしてもキャストは総勢300人超、なんと小出恵介も、斎藤工も、古田新太、吉田鋼太郎さえもほんのチョイ役だ。贅沢だなあ。CGチームやロケ協力などの長大なエンドロールのなかで、主役ゴジラの和風モーションキャプチャーを担当したという野村萬斎の名前が、存在感を放っていた。

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マネーモンスター

ジョディ・フォスター監督、ジョージ・クルーニー製作・主演のドタバタサスペンス。ウォール街批判、富の偏在批判を持ち込みつつも、荒唐無稽なエンタテインメント作だ。機内で。

マネー番組生放送中に、おちゃらけ司会者リー(クルーニー)の推奨で大損した男カイル(ジャック・オコンネル)が、爆弾をもって立てこもり、株価操作を暴けと迫る。大騒動のなか、リーと敏腕ディレクター・パティ(ジュリア・ロバーツが超人的活躍)は、投資会社アイビスで株価暴落を引き起こした巨額損失のからくりを追及する。

スピーディーな展開で、笑いも多く、徹頭徹尾ご都合主義。とはいえ時代を感じさせる要素はある。アルゴリズム取引、超高速取引、クオンツといった流行語を散りばめているだけでなく、システムのバグって説明で何もかも片付けてないか、とか、真相究明では「スポットライト」とまるで正反対に、ネット検索と映像ハッキングを駆使しちゃうとか。

こんなマネー番組が実在するのか知らないけど、クルーニーが決して正義の味方じゃなくて、むしろ頭空っぽみたいなキャラ設定なところが巧い。アドリブ満載、数秒で勝負する反射神経、視聴者の無責任な移り気にも、懲りない鉄面皮ぶり。なかなかシニカルだなあ。

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僕だけがいない街

大好きな藤原竜也主演の抒情SF。石狩のさびれた風情と、オーディションで選ばれたという子役の演技が素晴らしい。機内で。

三部けいの漫画を、ドラマ「チームバチスタ」シリーズの後藤法子脚本、「ROOKEIS」などTBSドラマの平川雄一朗が監督。
ピザ屋でバイトしている売れない漫画家・悟(藤原)は、災厄を防ぐまで意思と関係なく時間が巻き戻っちゃう特殊能力「リバイバル」を持つ。母・佐和子がかつて故郷で起きた連続少女殺人の真犯人に気づいたために殺されてしまい、悟は過去と現在を行き来しながら、犯人に立ち向かう。

正直、大詰めのパラレルワールドのつながりがわかりにくく、サスペンスとしての感興は今ひとつ。でも、身近な悲劇に関わり、観て観ないふりしないという勇気が、しみじみと響く。
なんといっても子供時代の悟を演じる中川翼と、悟が救う被害少女の鈴木梨央が、大人顔負けの演技力で、抜群の雰囲気を醸し出す。2人とも2005年生まれなんですねえ。先行き楽しみかも~ 気風のいい母・石田ゆり子、悟を信じるバイト仲間の有村架純も好感度大。ほかに、割と分かり易いキャスティングの及川光博、杉本哲太、安藤玉恵。贅沢なチョイ役で林遣都、福士誠治。

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