PERFECT DAYS

「ベルリン・天使の詩」のヴィム・ヴェンダースが監督、知人がエキストラで参加したと聞いて、劇場に足を運んだ。役所広司が東京の片隅に生きる、無口で丁寧なトイレ清掃員を好演。晴れでも雨でも、毎朝空を見上げて微笑む。孤独でワンパターンで清々しい日々を、お説教臭くなく描いて、心に染みる名作だ。1300円。
ワゴン車で聴く中古カセットはルー・リード、ザ・キンクス、ニーナ・シモン! ランチに神社の隅のベンチでサンドイッチを食べつつ、フィルムカメラで木漏れ日を録る。後悔も怒りもある。それでも自ら選びとった幸せのかたち。
脇がまた贅沢だ。気のいい同僚に柄本時生、入れ込んでいる相手に個性派アオイヤマダ、踊るホームレスに田中泯、家出してくる姪にみずみずしい中野有紗、週末に通うバーのママに石川さゆり、その元夫に三浦友和。ほかにも中古レコード屋店員が松居大悟、カメラ店主人が柴田元幸、ひとこと書評が渋い古本屋店主が犬山イヌコ、「朝日のあたる家」を伴奏するバー常連があがた森魚…
制作のきっかけは、渋谷区17か所の公共トイレを刷新する「THE TOKYO TOILET」を主導した柳井康治ファーストリテイリング取締役と電通の高崎卓馬が、ヴェンダースに短編PR動画を依頼したこととか。主人公の名「平山」をはじめ小津安二郎へのオマージュがにじむ。製作は Master Mind、スプーン、ヴェンダース・イメージズ。カンヌでは役所が日本人俳優として19年ぶり2人目の男優賞を受賞。

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怪物

カンヌで脚本賞を獲った話題作を劇場で。不穏な空気のなか、3つの視点から徐々に明らかになっていく驚きの真相。いったい誰が被害者で、誰が加害者なのか。「大豆田とわ子」などの坂元裕二による、秀逸な脚本に引き込まれます。
そしてたどり着く、切な過ぎるラストシーン。あの線路は、どこへ向かうのだろう。公開前に亡くなった坂本龍一のピアノが、こんなにも染みるとは。監督は「万引き家族」などの手練れ、是枝裕和。川村元気らの企画・プロデュースで。

舞台は諏訪湖畔の小学校。シングルマザー早織(安藤サクラ)は息子・湊(黒川想矢)の異変から、学校に教師・保利(永山瑛太)の虐待を訴え、校長(田中裕子)らの誠意ない対応に憤りを募らせていく。一方、身に覚えのない保利は、むしろ湊の依里(柊木陽太)へのいじめを疑っていたが、早織も校長らも信じてくれず、追い込まれてしまう。
そして湊の視点に転じると、すべてが違って見えてくる。冒頭の火事や、衝撃的な自動車事故にどんな切迫が隠されていたか。少年の孤独と自己嫌悪、廃線跡の秘密基地のわくわく、淡い恋。ある朝、保利と早織はようやく自分たちの「正義」の見当違いに気づき、暴風雨をついて、ふたりの行方を追うが…

なんといっても柊木の存在感が凄い。撮影時、設定(小5)通りの10才ぐらいなんだけど、もって生まれた妖しさ、これ、同級生にいじられちゃうのもわかります。そして瑛太の、観る者をいらいらさせる造形が見事だ。一生懸命なんだけど不器用で、うまく立ち回れずに歯車を狂わせていく。こういう人、いるよなあ。
ワキも高水準で、ずっと無表情でいる田中が垣間見せる、絶望の深さたるや。サックスの伏線が効いています。ほかに保利のドライな恋人に高畑充希、依里の問題のある父に中村獅童。

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イニシェリン島の精霊

演劇「イニシュマン島のビリー」、映画「スリー・ビルボード」などの曲者マーティン・マクドナーが監督・脚本。アイルランドの片田舎の島を舞台に、人と人が隔たることの残酷さを強烈にえぐり出す。拒絶されるという経験が、いかに人格を、人生を変えてしまうか。独特の意地悪さ、唐突な暴力、ブラックユーモアがまさにマクドナー節だ。劇場で。

舞台となる孤島は貧しくて、退屈で、住民は全員知り合いって感じ。でも時は1923年。おそらく1921年英愛条約に端を発した陰惨な内戦の終盤で、海を隔てた本土から銃声のようなものが聞こえてくる。今も決して終わっていない、隣人同士の殺戮というシビアな現実。
そんな遠景を考えると、物語はどこか寓話めく。主人公パードリック(コリン・ファレル)は、長年の友人でフィドルが巧いコルム(ブレンダン・グリーソン)らと、スタウトビールでうだうだするのだけが楽しみ。ところが突然、コルムが一方的に絶交を言い渡し、これ以上関わろうとするなら自分の指を切り落としていくと、常軌を逸したことを言い出して…

ファレルのさえない中年男ぶりが、情けなくも滑稽で素晴らしい。気の良い奴なのに、ブレンダンの意味不明の宣言によって激しく動転し、どんどん孤立し、闇へと落ちていく。絶対的拒否、排斥というものが引き起こす嵐。なぜこんなことになってしまうのか、誰にもわからない。少なくとも善悪では片付かない。舞台出身のグリーソンが難しい役を、淡々と知的に演じる。

島は架空なんだけど、ロケ地イニシュモア島の荒涼とした風景が全編を覆って、効果的だ。石灰岩の荒野、断崖、岩を積んだドライストーン・ウォールの農村…。タイトルは死を知らせる精霊バンシーのことで、重要なパーツは飼っているロバや犬。ザ・アイルランド! そもそも脚本は戯曲「アラン諸島三部作」の続編のアイデアなんだそうです。
主演はじめ、アイルランド出身で固めた俳優陣も充実。イノセントな隣人(個性派バリー・コーガン)の犠牲は悲しいけれど、賢くしっかり者の妹(ケリー・コンドン)は終幕で、ある決断をくだす… ディズニー傘下のサーチライト・ピクチャーズ配給。ゴールデン・グローブ最優秀作品賞受賞。

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スリー・ビルボード

がつんとやられました。さえない中年男女たちが必死にもがき、それぞれの心の傷をさらけ出していく。暴力と炎と下世話さが満載なんだけど、どこかペーソスが漂い、切なくて可愛い。秀逸な脚本・監督は「ビューティ・クイーン・オブ・リーナン」などのマーティン・マクドナー。「ノマドランド」のフランシス・ルイーズ・マクドーマンドが主演で、まさかの攻撃を繰り出して圧巻のはまり役だ。思い切りよすぎでしょ。録画で。

南部ミズーリの町外れに、レイプ殺人の未解決を責めたてる3枚の看板が出現。被害女性の家族、警察や町の人々に波紋を巻き起こす。人生、悪いことしてなくても悲運は起こる。それでも生きていくしかないし、どうするかは「道々考えればいい」。いやー、深いなあ。

なにしろ俳優陣が揃って一癖あって素晴らしい。問答無用で突き進む被害者母のマクドーマンドが抱える、深い後悔。責められた側の署長ウディ・ハレルソンの色気と包容力。そしてレイシスト巡査サム・ロックウェルの屈折、ダメ男ぶりが、実に味わい深い。アカデミー助演男優賞受賞もむべなるかな。「スポケーンの左手」観たいなあ。

印象的なシーンもたくさん。マクドーマンドが焼けた看板を貼り直すくだりで、軽い調子で署長を「スポンサーだもの」というところ、広告業者の意外に骨があるケイレブ・ランドリー・ジョーンズがロックウェルにオレンジジュースを差し出して、ストローを向けるところ… 秀作です。

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罪の声

原作は歴史に残る未解決犯罪、グリコ・森永事件で、脅迫電話の「子供の声」に焦点を当てた塩田武士のミステリ。その秀逸な着想を、しみじみ丁寧に描いた佳作だ。142分がちっとも長くない。
わけもわからず犯罪に加担してしまった者の葛藤。3人目の子供・曽根役の星野源の、優しさや恐れの繊細な表現に惚れ惚れする。才能ある人っているんだなあ。TBSドラマでお馴染み野木亜紀子脚本、土井裕泰監督。録画で。

2人目の子供・生島総一郎を演じる宇野祥平が、曽根と対照的な人生の悲惨を体現して怪演だ。一度踏み外してしまった者にとって、日本社会がいかに冷酷か。すんでのところで救い出されて、あの「罪の録音」が救いに転じる展開に涙。
もう一つの軸に、希代の劇場型犯罪に踊ったメディアの罪というものがあって、ストーリーが多角的になっているのも、いい。あのとき果たして、脅迫状が届くのを待ちわびなかったメディアがあったろうか。発生30年を機に事件を発掘していく記者・阿久津の小栗旬が、じわじわと曽根の探索に近づいていく過程のサスペンス、そして彼自身の悩み、成長の物語に引き込まれる。ちょっと猫背、独特のちゃらさがいいバランスだ。
ほかの出演陣も説得力たっぷりで、曽根の母に梶芽衣子(わけありでないはずがない)、回想の父に尾上寛之(誠実)、鍵を握る叔父に宇崎竜童(雰囲気あるなあ)、重要な証言をする板前に橋本じゅん(曲者)、総一郎の母に篠原ゆき子(ひたむき)、社会部デスクに古舘寬治(曲者2)ら。

謎解きに加え、ついには哀愁のイギリスにまで至るロードムービー的なスケール、そして凝りまくりの「昭和」再現も見事。これぞ映画の醍醐味という感じ。ちなみに犯人グループの造形は、有力な説のひとつらしいです。事件は2000年にすべての公訴時効が成立。いつか真相を語る人が現れるのだろうか…

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サマー・オブ・ソウル

アレサ、ジャニスときて、こちら。1969年、NYハーレムで30万人を動員したフリーライブ・シリーズ「ハーレム・カルチャラル・フェスティバル」のドキュメンタリーだ。カッコいいパフォーマンスのジャンルは、ゴスペル、モータウンからラテン、ジャズまで幅広いけど、共通項はブラック。ハーレムの混沌と夏の日差しが、スクリーンに溢れて熱い。監督はアミール”クエストラブ”トンプソン。日比谷のシネコンで。

当時のニュース映像や丹念な証言インタビューで、社会状況を語る手際が秀逸。68年4月にキング牧師、6月にケネディ暗殺が起こり、11月にニクソンが当選。6~8月の6日間のフェスの最中、7月20日にもたらされたアポロ11号の人類史的ニュースに、「月に行くカネがあったら恵まれない人に使え」と反発する観客の声が強烈だ。

ライブ映像のインパクトは文句なし。ブルースマンB.B. King「Why I Sing The Blues 」の悲しみ、伝説Mahalia JacksonとMavis Staples「Precious Lord, Take My Hand」の絶唱、闘士Nina Simone「To Be Young, Gifted & Black」の怒りと誇り。 50年たって、世界はどれだけましになったのか。だからこそウッドストックにも出演したというSly & The Family Stone「Everyday People」の革新に、思わず喝采しちゃう。人種もジェンダーも超えていく、音楽のパワー。

共和党の異端児ジョン・リンゼイNY市長とブラック・パンサーの関係、ニューヨークタイムズの白人編集者エイブ・ローゼンタールの決断から、アフリカンファッションまで、情報量多過ぎ。おまけ映像( Stevie Wonder19歳!のやんちゃぶり)もあるから、エンドロールで席をたたないでね。サンダンス映画賞で審査員大賞受賞。サーチライト・ピクチャーズ製作。

以下、セットリストです。

Drum Solo / It’s Your Thing – Stevie Wonder
Uptown – Chambers Brothers
Why I Sing The Blues – B.B. King
(Knock On Wood – Tony Lawrence and The Harlem Cultural Festival Band)
Chain Of Fools – Herbie Man ftg. Roy Ayers
(Give A Damn – Staples Singers)
Don’tcha Hear Me Callin’ To Ya – Fifth Dimension
Aquarius / Let The Sunshine In – Fifth Dimension
Oh Happy Day – Edwin Hawkins Singers ftg Dorothy Morrison
Help Me Jesus – Staple Singers
Heaven Is Mine – Prof. Herman Stevens & The Voice Of Faith
Wrapped, Tied & Tangled – Clara Walker & The Gospel Redeemers
Lord Search My Heart – Mahalia Jackson & Ben Branch
(Let Us Break Bread Together – Operation Breadbasket)
Precious Lord, Take My Hand –Mahalia Jackson & Mavis Staples
My Girl – David Ruffin
I Heard It Through The Grapevine – Gladys Knight & The Pips
Sing A Simple Song – Sly & The Family Stone
Everyday People – Sly & The Family Stone
Watermelon Man – Mongo Santamaria
Abidjan – Ray Barretto
(Afro Blue – Mongo Santamaria)
Together – Ray Barretto
It’s Been A Change – Staple Singers
Shoo-Be-Doo-Be-Doo-Da-Day – Stevie Wonder
Ogun Ogun – Dinizulu & His African Dancers & Drummers
(Cloud Nine – Mongo Santamaria)
Hold On, I’m Coming – Herbie Mann & Sunny Sharrock
It’s Time – Max Roach
Africa – Abbey Lincoln & Max Roach
Helese Ledi Khanna – Hugh Masekera
Grazing In The Grass – Hugh Masekela
Backlash Blues – Nina Simone
To Be Young, Gifted & Black – Nina Simone
Are You Ready – Nina Simone
Higher – Sly & The Family Stone
Ending credit roll Have A Little Faith – Chambers Brothers

 

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ジャニス・ジョプリン

アレサの勢いにのって、今度はジャニスを鑑賞。こちらは2013年ブロードウェイミュージカル「A Night With Janis Joplin」の映画化です。物真似と侮るなかれ。ジャニス役の太っちょメアリー・ブリジット・デービーズ、そして女性黒人シンガーたちが熱唱に次ぐ熱唱で、ブルースを堪能する。テンポもよく、大音響で感激。年配多めの客席が、ノリノリなのも楽しい。
デビッド・ホーン監督。ガラガラのシアター東劇で特別料金3000円。残念ながら割引適用はなし。

歌をたっぷり聴けるのが、まずいい。ストーリーはあまりなく、一夜のショーの形式で、ジャニスを形作ったレジェンドたちとの「夢の共演」をたたみかける。エタ・ジェイムズのR&B「Tell Mama」、オデッタのフォーク「Down on Me」、ベッシー・スミスのブルース「Nobody Knows You When Youre Down and Out」、「幻の共演」女王アレサ・フランクリンのソウル「Today I Sing the Blues」「Spirit in the Dark」、そしてニーナ・シモンのピアノジャズ「Little Girl Blue」! アレサやニーナ役はアシュリー・テイマー・デイヴィスという人。

発見もある。67年モントレー・ポップ・フェスでの「Ball and Chain」や69年ウッドストック・フェスでの「Work Me,Lord」で、一躍ロックのアイコンとなり、1970年に薬物過剰摂取のため急死、享年27才。ジャニスの「伝説」は無軌道なヒッピー文化そのものと思ってたけど、そのイメージはもしかすると時代ゆえ。実はテキサスの白人中流家庭に育った、「絵を描くの好きなお嬢さん」だったんですねえ。
ケタ外れの才能で、精神は幼いまま大成功しちゃったジャニス。深い孤独を抱え、音楽的にはこれからという時に人生が断ち切られちゃった。「Summertime」の圧巻のシャウトが切ないからこそ(アレサのAmazing Graceに匹敵!)、ラストで皆で大合唱する「Mercedes Benz」の他愛なさが、なんとも染みます。

セットリストはほかに「Piece of My Heart」「Cry Baby」「Try」「Get It While You Can」「Maybe」「A Woman Left Lonely」「Half Moon」「Kozmic Blues(よい!)」「Trust Me」「To Love Somebody(よい!)」「Turtle Blues」などなど。ただブルースいいけど、朝聴くと勤労意欲は失せますな。
なんか大好きな「ローズ」をリメイクする計画もあるとか。ほー。「松竹ブロードウェイシネマ」の一作。

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ダンケルク

難解SFのイメージが強いクリストファー・ノーラン監督が、あえてストーリーも説明も排除。言わずとしれた1940年史上最大の撤退戦を、英国側当事者が体感した恐怖、それのみに徹して描く。
とにかくセリフが少ない。なもんで、陸海空3つの視点と1週間・1日・1時間の時間軸が交錯して、正直わかりにくい。でも、無力感だけはヒリヒリ伝わって、見終わったときにはぐったり。録画で。

なんといっても陸=桟橋の二等兵トミー(フィン・ホワイトヘッド)が鮮烈。冒頭から荒廃した街をただ逃げまくるわ、軍用船は次々撃沈するわ。なんという無力感。それでもただ生き残ろうとする、無名で未熟な「その他大勢」のあがきが息苦しい。
海=民間の身で救助に向かう老船長ドーソン(マーク・ライランス、「ブリッジ・オブ・スパイ」のロシアスパイですね)と息子(トム・グリン=カーニー)、それに空=スピットファイアで撤退を援護するパイロット、ファリア(トム・ハーディ)のほうにはヒーロー感があるものの、決してハッピーとはいえない。格好いいのはフランス兵のため、と言って桟橋に居残るボルトン海軍中佐ぐらいかな。堂々ケネス・ブラナーだものね。
33万人の兵士らを、総勢6000人のエキストラと厚紙!の人形で表現したとか。ゲームっぽくない迫力がさもありなん。

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シェイプ・オブ・ウォーター

2018年アカデミー作品賞&ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞の、さえない中年女性イライザとモンスターの恋を描く大人のファンタジー。全編にあふれる「水」が、理屈抜きに本能を揺さぶる。特撮・アニメ好きメキシコ系監督ギレルモ・デル・トロの、イマジネーション力が凄い。これぞ映画、かも。日本版でもR15+だけど、お伽噺ってそういうものだよね。録画で。

「グリーンブック」に続いて1962年、米ソ冷戦下のボルチモア。イライザが深夜、掃除婦をしている秘密研究機関に、アマゾンから謎の生物が運び込まれる。巨大水槽の奥でうごめくのは、なんと半魚人! グロテスクだけど知性があって、声を持たないイライザと手話で会話し始め…
ヒロイン、サリー・ホーキンスがなんとも切ない。孤独で不器用だけど、スパイアクションもどきに活躍して、半魚人を連れ出しちゃう。愛が深まるプロセスの、目の演技に凄みも。ミュージカル好きで、空想のなかでのびのび歌い踊るシーン、好きだなあ。
隣人の時代遅れイラストレーターのリチャード・ジェンキンス、気のいい掃除婦仲間のオクタヴィア・スペンサーがコミカル。一方で、傲慢な軍人マイケル・シャノンが怖すぎます。ほとんどCG半魚人のダグ・ジョーンズは、もともとパントマイマーなんですね。佳作。

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引っ越し大名!

江戸前期、生涯7回もの国替えをさせられた実在の大名・松平直矩(及川光博)。姫路から日田へ、しかも減封の苦境で、引っ越し差配を命じられたのはコミュ障で「かたつむり」と呼ばれた書庫番・片桐春之介(星野源)。しかし彼には最強の武器、有り余る知恵と無私の心があった… 原作・脚本は土橋章宏原、監督は犬童一心。録画で。

理不尽な苦境を打開していく群像は、ひたすら爽やかで元気が出る。まず冒頭のタイトルが松竹!時代劇!で嬉しい。
頼りなさげな星野源はもちろん、周囲のキャラとキャストが絶妙のはまり具合だ。前任引っ越し奉行の娘・於蘭(高畑充希)が凛として切なく、お調子者の御刀番・鷹村源右衛門(高橋一生)の天下三槍「御手杵」遣いが格好良く、勘定頭・中西監物(濱田岳)が健気で、取り残されて農民となる山里一郎太(小澤征悦)に大人の哀愁がある。

ほかに家老・松重豊、留守居役・山内圭哉、母・富田靖子、廻船問屋・岡山天音、リストラされる藩士に飯尾和樹、ピエール瀧ら。そして敵役には次席家老・西村まさ彦、皿が大事な勘定奉行・正名僕蔵、渋い隠密・和田聰宏と豪華です。
劇中を彩る「引っ越し唄」シーンの振付・監修はまさかの野村萬斎で、まるでミュージカル。ラストの主題歌、ユニコーンの「でんでん」まで、染みます。

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