ミリオンダラー・ベイビー

言わずとしれた2004年アカデミー作品賞の一本を、録画で観た。クリント・イーストウッド監督、ポール・ハギス脚本。

クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマンの演技対決。尊厳死を扱った幕切れには正直、納得できないけれど、悲しい結末に至るまでの心の動きが、本当に丁寧に丁寧に描かれていて、胸に染みいる。

特に、スワンク演じるマギーが秀逸。家族の愛に恵まれず、社会的地位もカネもないし、おまけにもう若くもない。孤独なひとりの女性が、プロボクサーを目指して才能とガッツ、誇りを示す。不幸に見舞われた後に、イーストウッド演じるトレーナーのフランキーと、田舎の小屋に住んでレモンパイを焼く夢を語るシーンの、なんと残酷で、切ないことか。頑張ったのにどうしても手が届かない、ささやかな平穏。

全体に画面の陰影が濃くて、終盤、いよいよ追いつめられたフランキーと、親友スクラップ(フリーマン)が語り合うシーンなんか、もうモノクロ映画。スクラップにはフランキーの悲しい決意がわかっているんだなあ。
決して重苦しいばかりではなく、テンポの良さ、ユーモアを散りばめることも忘れていない。やっぱり巧いです。

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「半落ち」

佐々部清監督。寺尾聰、原田美枝子、吉岡秀隆。劇場で。

妻を手にかけたと自首した元刑事。だが犯行後2日間の行動をどうしても語らない。そこにこめられた「命」の意味とは…

疲れました、國村隼の弁護士の、ぶら下がり中継あたりから泣きっぱなしで。横山秀夫の原作小説を読んで、ストーリーは知っているはずなのに。観たのは深夜だったけど老若男女よく入っていて、やっぱり鼻をすする声が多かった。

冒頭の取り調べまでの速いテンポ、次々惜しげなく出てくる渋いキャスト。人物一人ひとりの背負っているものが善悪一辺倒でなく、深い。それぞれに思いを投影させながら観ていく。散漫との意見もあるようですが、説明し過ぎず、大上段に語らない分、抑制がきいていたのでは。
とにかく寡黙な寺尾聰がはまり役。微妙な目の演技とか、案外、大スクリーンで観るに耐える人だと思いました。

原作の直木賞落選で話題になったあたりは、うまくかわしてましたね。横山秀夫のカメオ出演も楽しかった。

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「上海家族」

ポン・シャオレン監督。チョウ・ウェンチン。岩波ホールで。

旧市街を舞台に、女流監督が女三代の前向きな人生をドキュメンタリータッチで描いています。

離婚、再婚、自立という人生の変遷を、住宅に象徴させた手法がしっくりきた。家のかたちが心情を映すことに何か親しみを覚えるのは、ひょっとしてアジア的感覚なのかなあ。母娘の絆に、なごやかな気持ちが満ちる一本。

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「キル・ビルvol2」

クエンティン・タランティーノ監督。ユマ・サーマン、デビッド・キャラダイン。劇場で。

「ザ・ブライド」の復習劇第二幕。

相変わらずのB級感満載。アクションよりラブ・ストーリーの要素が強い、という話だったけど、そうだっけ。ユマが土に埋まっちゃうところは、本当に怖かったです。だから土埃を舞いあげてドライブインに歩いてくるシーン、すごく笑っちゃいました。

ただしダリル・ハンナは「?」。vol3の構想もあったと聞くが…

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「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」

アルフォンソ・キュアロン監督。ダニエル・ラドクルフ、試写で。

予習した「秘密の部屋」は召使いのドビーがチャーミングだったけど、本作はあんなに際だったキャラクターは登場し ません。見所は、成長したハリーが大人達とかわす、対等で爽やかな友情! 回廊のシーンで、両親の温かい思い出話をききながら、ひっそり微笑むシーンとか。いやー、大人になりました!

おどろおどろしい対決は少なめで、謎解きもすっきりわかりやすい。映像としては開放感あふれる湖の飛翔と、随所に散りばめたきめ細かい季節の表現がよかった。ディメンターもイメージが膨らみます。冒険ファンタジーとしては全体に地味めかもしれませんが。

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「モナリザ・スマイル」

英マイク・ニューウェル監督。ジュリア・ロバーツ。試写で。

ジュリア・ロバーツが名門女子大に旋風を起こす進歩的美術教師を演じるが、困ったときの笑い顔がやっぱりキュートで全く堅苦しくない。

奔放なマギー・ギレンホールと狭量なキルスティン・ダンストという対照的な学生の間に通う友情、散りばめられた50年代 ファッションや家電製品が見所か。ジュリアが訴えかけるクライマックスの講義シーンで、スライドを替える切迫したリズム感が効果的。とはいえ今何故、古き良きウェルズリー大と、設定には疑問を感じたけれど、ヒラリー・クリントンの母校で、ちょっと政治色ものぞいていたかな。

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「誰も知らない」

是枝裕和脚本・監督。柳楽優弥、北浦愛。試写で。

88年に東京・西巣鴨で起きた、実際の子供置き去り事件がモチーフ。カンヌ国際映画祭で柳楽優弥が史上最年少の14歳で最優秀男優賞を受けた話題作。確かに、帰らない母を迎えに行き、幼い妹を温かくみつめるシーンなど、ただ者でない存在感だ。

こ うした子供達の魅力が引き出されたのは、ドキュメンタリータッチだからかも。実際に1年かけて子供達も成長していく。ゴンチチのシンプルなギターを背景に、石段を上り下りしながら淡々と進むストーリー。だからこそ、言葉にならない心の波立ちや、周囲の救いようのない無関心がリアルだ。母親のYOUも秀逸。

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「69」

村上龍原作、宮藤官九郎脚本、李相日(リ・サンイル)監督。妻夫木聡、安藤政信。劇場で。

時代背景を絵に散りばめつつ、いつの高校生にも共通の、持て余し気味のエネル ギーや恥ずかしさを明るく描いて笑えました。妻夫木聡は相変わらず年齢を感じさせない瞳で、太田莉菜も可愛い。若い人が多い場内も明るい雰囲気でした。

ちょっと悩みが浅くて物足りない感じもあったけれど。キャストが渋い。森下能幸ってキルビルにも出てたんですね!

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「コラテラル」

マイケル・マン監督。トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス。試写で。

コラテラルとは巻き添えのこと。平凡なタクシー運転手が、ビジネスマン風の客を拾ったために、殺人事件に巻き込まれる。

まるで舞台を観ているような対話劇だ。運転手のジェイミー・フォックスと検事のジェイダ・ビンケット=スミ ス、銀髪のトム・クルーズとが、狭いタクシー車内で語りまくる。そして伏線の後、悠然と道を歩く野性の象徴、コヨーテ。

エンドロールが流れたとき、たまたま後ろの席にいた 女性客同士が、「なにこれ」と怒っているのが聞こえた。確かにサスペンスとしては、クラブも高層ビルも地下鉄も、陳腐になりがちな設定だろう。悪役に徹したトム・ク ルーズに至っては、追跡シーンで転んだりして格好悪い。でも、だからこそ、夜を超えていく野性というものが、奇妙に後をひくのでは。

まあ、要するに、マイケル・マン節ということかな。音楽がどれも、切れ味抜群。

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「ソウル・サヴァイヴァー」

クリス・ヘジダス、DAペネベイカー監督。試写。

60、70年代ソウルのスターの現役ステージと、インタビューを詰め込んだドキュメンタリー。まず理屈抜きに、音楽が楽しい。毒舌で、いまなお悪童ふうのウイルソン・ピケットが格好いいなあ。
夭折した天才は伝説になる。生き残ってどん底を経験し、老いたスター達の顔の皺には、嫉妬や挫折や憤懣が染みついてしまっている。だけど、歌えば今も本物だ。それは、すごいことだ。

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