ONCE ダブリンの街角で

アイルランド旅行から戻った復習編は、ジョン・カーニー脚本・監督の音楽映画。映画を元にしたミュージカルを来日で観たことがあるけど、改めて切ない楽曲が染みる佳作です。録画で。
お話はシンプルな大人のラブストーリー。30代のストリート・ミュージシャン(グレン・ハンサード)が、チェコ移民の花売り女(マルケタ・イルグロヴァ)と出会って勇気を得、デモテープを作る。不器用に恋心を寄せるものの、マルケタは離れていた夫を選択。グレンは思いを残しつつ、夢を追ってロンドンに旅立つ。
制作費15万ドル、街頭では許可なく望遠レンズを多用したという映像はドキュメンタリータッチ。主演2人が作って歌う手作り感も好ましい。グレンのアパートで撮影したというパーティーシーンの歌の素朴さ、レコーディング後にエンジニアが「カーステ・テストだ」と言い出して、海岸へドライブするシーンの解放感も印象的。グレンを送り出す、修理工の老父が泣かせます。

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ブーリン家の姉妹

ジャスティン・チャドウィック監督。先日、ライブビューイングでオペラ「アンナ・ボレーナ」を観たので、同じアン・ブーリンを描いた歴史劇を観た。録画で。

豪華絢爛な衣装、陰影が濃い映像美はオペラの舞台でイメージした通り。アンを演じるナタリー・ポートマン、妹メアリーのスカーレット・ヨハンソンという若手女優2人の演技対決が見物です。

お話は英国版大奥というか、階級社会を背景に成り上がるため、浮気で身勝手なイングランド王ヘンリー8世の寵愛を姉妹で奪い合っちゃうという、モラルそっちのけの身も蓋もない内容だ。とはいえ運命の変転に伴い、女優2人が表情の変化を演じて見事。前半はアンが、乗馬シーンに象徴される勝ち気と意地の悪さを存分に発揮し、後半は身勝手な姉を許すメアリーが、芯の強さを見せつける。

それにしてもアンって、歴史上の重要人物だったんですねえ。たかが略奪婚のためにイギリスをカトリックと決別させ、さらには後に無敵艦隊を破ることとなるエリザベス1世を産み落とす。勉強不足でした。王様のエリック・バナがなかなか格好良い。

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マイライフ、マイファミリー

タマラ・ジェンキンス監督・脚本。ローラ・リニー、フィリップ・シーモア・ホフマン、ピーター・フリードマン。日本では劇場未公開の一本を、WOWOWの録画で。原題は「サヴェージ家の人々」。

それぞれ独身で、もう中年の兄と妹が、長く疎遠だった父親を突然、引き取ることになる。といっても認知症の父と暮らせるわけもなく、老人ホームに預けることに。なんとも地味な内容なんだけど、ユーモアが漂う佳作。

好き勝手に暮らしてきた父と、閉塞感漂う介護の現実。大学で演劇論を教えるいい大人なのに、結婚から逃げている兄や、劇作家を目指しつつ、不安定な派遣の仕事に疲れている妹の境遇も、情けなくて真実味がある。
冒頭、父が暮らす高齢者タウン、アリゾナ州サンシティの鮮やかな現実感の無さと、老人ホームがある雪舞うバッファローとの対比が胸に染みる。

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魔笛

監督はシェークスピア俳優でもあるケネス・ブラナー。ジョゼフ・カイザー、エイミー・カーソン。ジェームズ・コンロン指揮、ヨーロッパ室内管弦楽団。録画で。

モーツアルトの名作オペラ「魔笛」を、英語訳の歌と演奏で大胆に映像化。

新国立劇場で「魔笛」を観劇する前に、予習として観た。音楽の心地よさはもちろんだけど、設定を現代的な第1次大戦の塹壕に置きかえつつ、壮大で作り物感満載のCGと、宙を舞うカメラワークで一気にファンタジーの世界に引き込む技はさすが。楽しめます。
タミーノ、パミーナら歌手陣も美形で、イメージを損ねない。ザラストロは貫禄のルネ・パーペだしね。墓地で平和への願いを歌い上げるシーンなど、格好いいなぁ。リューボフィ・ペトローヴァの夜の女王は、はじけまくってコミカル。

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スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ

三池崇史監督。伊藤英明、佐藤浩市、伊勢谷友介。録画で。

源氏と平家の末裔というギャングが、埋蔵金をめぐって激突する寒村に、ふらりとやってきた天才ガンマン。

気になっていた不思議ウエスタンを観る。この監督は実は馴染みがないけど、任侠と時代劇とウエスタンの強引な混合、全編つたない英語にちょっとだけ混じる変な日本語、そして、これでもかという暴力表現。想像以上のB級ぶりで、タランティーノ好きの私としても、ちょっとげんなり。

とはいえ、すさんだ殺戮の村に咲く薔薇の花とか、色彩の表現は鮮やか。このへんは、さすがじゃないでしょうか。
豪華キャストが一人残らず、キレまくっているというか、正気じゃないというのも、凄い。特にコミカルな香川照之が怪演だ。主役のはずなのに一番おとなしい伊藤英明の、わざとらしいスカシ方も悪くない。堺雅人はずいぶん脇役だけどね。

不満なのは、ばかばかしくも思わず拍手しちゃうようなシーンが、少なかったことかなぁ。その点では、桃井かおりが存在感あり。

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「墨攻」

張之亮(ジェイコブ・チャン)監督。劉徳華(アンディ・ラウ)。録画で。

「レッドクリフ」の試写を逃したので、中国つながりで観る。戦国時代を舞台にした酒見賢一の中島敦記念賞受賞作の漫画版を、さらに映画化。

「泣き虫弱虫諸葛孔明」の酒見ワールドの先入観があったけど、全く違っていて、落ち着いた雰囲気の歴史もの。墨子の思想を貫こうと単身、小国の守りに赴く孤高の軍師、革離がひたすら格好いい。
三国志よりさらに古い時代のお話とはいえ、ストールを巻いたアンディ・ラウは現代的風貌。でも、もちろん気にしませんよ。城の外で敵将と向き合い、将棋みたいなゲームで力量を探り合う、とか、渋い。そのへんの絵も綺麗です。

終盤はありえない戦闘アクションがどんどんエスカレートして、目を見張ります。ここまでやるか! まあ、言葉による思想的丁々発止とか、落ちどころはちょっと意外感に欠けるかもしれないけど。

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「ドリームガールズ」

ビル・コンドン監督。ジェイミー・フォックス、エディ・マーフィー、ビヨンセ。試写で。

モータウンとシュープリームスをモデルにしたマイケル・ベネット演出ミュージカルの映画化。
黒人音楽をポップスとして広めたモータウンの成功談と、その立役者たちの心のあやを描く。ストーリー自体にそれほど膨らみはないものの、俳優陣がみな歌がうまくて、私のようなR&B好きにはたまりません。シカゴとか、ミュージカル映画を観るといつも思うんだけど、ハリウッドスターは本当に芸達者ですな。

特に、話題になった新人ジェニファー・ハドソンの歌唱は、迫力満点でさすが。ビヨンセ・ノウルズも当たり前ながら綺麗だし。「ワンナイト・オンリー」とかバラードとか、貫禄ですねえ。それから60年代、70年代のキッチュなファッショ ンも楽しかった。

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「秒速5センチメートル」

新海誠脚本・監督のアニメ。渋谷シネマライズで鑑賞。

いやー、聞いてはいたけれど、光や雪、花びらとかの表現が、なんとも繊細で驚き。実写にはできないアニメの表現だと思う。リアルを超えて五感を刺激する不思議さ。

それから、ちょっと断片的にみえるエピソードが、ひりひりするようだ。恋人に会おうとして乗った列車が、遅れに遅れる切なさ、じれったさ。それからロケットの打ち上げで、いいようのない勇気を得る感じ。

主題歌になっている、山崎まさよしの名曲「One more time,One more chance」の曲調が、画面のイメージとぴったり。人物の表現と声優が、いかにもアニメ、なのが個人的にはちょっと残念だけれど。

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サッドヴァケイション

青山真治監督。浅野忠信、オダギリジョー、辻香織里。試写。

オール北九州ロケ。実は、話がつながっている前2作を観ていないので、今ひとつ人間関係が飲み込めなかったものの、案外楽しんだ。暴力的で 破滅に向かうストーリーなんだけど、乾いたユーモアがあるからかな。特に、浅野忠信の憎めない屈折。

俳優陣が若手を含めてなかなか豪華じゃないでしょうか。宮崎あおいとか、高良健吾とか。とにかくタフな石田えり、板谷由夏に脱帽。存在感があります。光石研、斉藤陽一郎も軽妙でよかった。

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「それでもボクはやってない」

周防正行監督・脚本。加瀬亮。録画で鑑賞。

痴漢冤罪事件をテーマにした話題作。司法への疑問という、難しくて地味なテーマをまじめに描いている。一市民がある日突然捕まったら、どういうことが起きるのか。しかも、エンタテインメントとしての完成度が高い。主人公は社会的に、また人物としてもなんだか力のなさそうな一フリーター。その彼を助けようと、弁護士や友人が協力して再現実験をするあたりの盛り上がり、センスが光るなー。

評判の加瀬亮が、うまい。ごくごく普通で、余計なオーラがないというか。役所広司に続く、貴重なキャラといえそう。

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