スラムドッグ$ミリオネア

インド・ムンバイ(ボンベイ)のスラムに生まれた少年ジャマールが、クイズ番組で巨額の賞金を獲得するまで。目を背けたくなるような過酷な運命なんだけど、回想シーンを含めてとてもテンポが良く、どこか幻想的かつ知的で、乾いた希望が漂う。秀作だ。録画で。

コールセンターのお茶くみ青年ジャマール(デーブ・パテール、ケニア出身のインド系移民)は、無学なのにインド版「クイズ$ミリオネア」に出演して次々に正答。不正の濡れ衣をかけられ、警察で取り調べ、というか、ありえへん拷問にあう。偶然にも知っている問題が出てたんです、というわけで、壮絶な少年時代を語り始める。
イスラム教徒迫害で母を失い、兄サリーム(マドゥル・ミッタル)、ゆきずりの少女ラティカ(綺麗なフリーダ・ピントー、インド出身のモデル)と、浮浪児に物乞いさせる悪党ママンにつかまる。兄弟は逃げ出して、タージマハルで観光客をだましたり、ハンバーガー店で働いたりして生き抜く。
結局、ラティカが忘れられずムンバイに戻るが、ママンを撃ったサリームは身を守るため、裏社会のボス・ジャヴェドの手下になり、ラティカも差し出しちゃう。ひとりになったジャマールは再会を信じて、ラティカが好きなクイズ番組に出場。兄の犠牲、「ライフライン」の切ない電話シーン、そして感動のラストへ…

パテールの、頼りないんだけど、幼い恋を貫く一途さが全編を牽引。子供時代に臭過ぎる方法でサインをもらう設定のスター、アミターブ・バッチャン(本人は出てないけど)が、実際にクイズ番組の司会だったり、冒頭スーパーが入る4択の答えがラストに出たりと、仕掛けが多くて洒落ている。そしてエンドロールはインド映画へのオマージュ、運命の駅頭での怒涛のダンスシーンだ!

監督は2012年ロンドン五輪開会式の芸術監督を務めた、英国のダニー・ボイル。才人ですねえ。2009年アカデミー賞で作品賞はじめ8部門を獲得。

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最後の初恋

ジョージ・C・ウルフ監督。ニコラス・スパークス原作。リチャード・ギア、ダイアン・レイン。機内で。

ニコラス・スパークス原作の、趣味のいい大人の純愛映画です。季節はずれのひなびた海辺の町で、親友に頼まれ5日間だけプチホテルを切り盛りする中年女性エイドリアンが、たったひとりの無愛想な宿泊客ポールと思ってもみない恋に落ちる。

このコンビはさすがですね~。抑制した色気があって、若作りしているわけじゃないんだけど、どこか清潔感が漂う。それぞれの仕事や家族の葛藤、転機となるハリケーンというシチュエーションなどはややベタながら、美しい海辺の風景、オールディーズなどの道具立てがお洒落でいい感じ。特にラスト、野生馬の群れのシーンは力があって美しい。実際にノースカロライナには難破船で生き残ったスパニッシュ・ムスタングの末裔がいるらしいです。秀作じゃないでしょうか。

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ワルキューレ

「ユージュアル・サスペクツ」のブライアン・シンガー監督。トム・クルーズ、ケネス・ブラナー、ビル・ナイ、テレンス・スタンプら豪華キャスト。録画で。

ワーグナーをBGMに、シュタウフェンベルク大佐らが企てたドイツ軍内部のヒトラー暗殺計画を描く。有力者たちの複雑な駆け引き、総統大本営「狼の巣」でのサスペンスと、気が抜けない展開。
何かと軋轢を抱えてるみたいだけど、トム・クルーズは力演です。史実が史実だから、幕切れがすっきりしないのは、しようがないんだけど。

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永遠のこどもたち

J・A・バヨナ監督のスペイン・メキシコ映画。ベレン・ルエダ。録画で。

幼い日を過ごした海辺の孤児院を買い取り、ホームを開くラウラ。しかしある日悲劇が起こり、難病の息子シモンが忽然と姿を消してしまう。やがて薄気味悪いソーシャル・ワーカーのべニグナと、息子の過去を知り…。
ホラーなんだけど、必死で子供を探す母の思い、それが遠い過去の悲劇と重なってくる感じがけっこう切ない。まあ、結局、救いはないんだけど、なんかファンタジーっぽかったです。

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96時間

「パリより愛をこめて」のピエール・モレル監督。脚本は師匠リュック・ベッソンとロバート・マーク・ケイメンの「トランスポーター」チームです。録画で。

「シンドラーのリスト」のリーアム・ニーソンが、パリを舞台にまさかのノンストップアクションを展開。アルバニア系マフィアに拉致された愛娘をひたすら追う。

父ブライアンが冒頭の、離れて暮らす情けない感じから、危機を知ってカチッと追跡モードに切り替わるところが、すごく格好良い。さらに、拉致現場のアパートの捜索で、事件が生々しく再現されるところも。
「娘が無事なのは96時間以内だろう」と知らされ、どんどん打つ手がエスカレートしていく。明らかにやりすぎだけど、それも父の愛ってわけ。その割に涙ぐましいエピソードなんかは一切なく、幕切れもドライなのが、また見事ですねえ。お約束のド派手なカーチェイス、警察の裏を読むサスペンスも。

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落下の王国

ターセム・シン監督。リー・ペイス、カティンカ・アンタルー。録画で。

20世紀初頭のロス。撮影中の事故で入院していたスタントマンの青年が、オレンジ摘みで怪我をした愛らしいインド移民の少女に、英雄談を作って話し聞かせる。そこから生まれる、心の交流と再生。

好きな映画だ。まさに芸術。空想シーンのあまりの美しさに、最初から最後まであっけにとられて観た。これが13の世界遺産を含む24カ国以上でのロケによるもので、決してCGではない、というから驚くほかない。そのうえ映画は、そんな圧巻の映像美をちゃんとコントロールして、少女の愛らしさや人情味もしっかり伝わってくる。巧いなあ。

ストーリーは壮大だけどコミカル。俳優陣が現実と空想の1人2役で、大活躍だ。さらに冒頭とラストで、黎明期の映画というエンタテインメントに対する深い愛着が示されていて、切ない余韻を残す。名作。

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彼が二度愛したS

マーセル・マンネゲッガー監督。ヒュー・ジャックマン、ユアン・マクレガー。録画で。

真面目な会計士ジョナサンが、遊び人の弁護士ワイアット・ボースと知り合い、謎の社交クラブに関わったことで罠に陥る。

ヒュー・ジャックマン設立のシード・プロダクションズ第1回作品だそうです。謎の女、Sを演じるミシェル・ウイリアムズがチャーミングで、ジョナサンとの切ない恋の描写や、全体の映像は洒落ているんじゃないでしょうか。ミステリーとしての劇的な感じはいまひとつだけど。

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「ダークナイト」

クリストファー・ノーラン監督、クリスチャン・ベール。録画で。

アメコミ実写版の第6作。前作「ビギンズ」のスタッフが、真面目でダークな雰囲気を引き継ぎ、希代の悪役ジョーカーとの対決を描く。

本人が完成を待たずに亡くなってしまったこともあって、ジョーカーを演じたヒース・レジャーの怪演が評判をとりました。最初、機内で観かけたんだけど、よくストーリーがわからず、録画で見直しちゃった。ダークナイトって暗い夜じゃなくて、闇に生きる騎士だったのね、はは。

確かにジョーカーは問答無用の存在感! 化粧が崩れているのが妙にリアル。そして大迫力の病院爆破シーンで、ちょこまか歩いて出てくるところの、無邪気といっていいほど子供じみた感じが凄い。観る者に、このキャラは絶対救えない、と思わせる。バットマンの徒労感は、深い。  

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ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝

ロブ・コーエン監督、ブレンダン・フレイザー、ジェット・リー、ルーク・フォード。録画で。

ブルーダイヤ「シャングリラの眼」を上海の博物館に届ける役目を請け負ったオコーネル夫妻が、またまた巻き込まれる大冒険。

相変わらずのCG満載、まあったく何も考えずに楽しめるスピーディーな活劇。しかも今回は舞台が中国。大好きな大量の兵馬俑軍団が、実際に動いて闘っちゃいます。楽しいなー。しかも悪役の、2000年の時を超えて蘇った古代の皇帝役は、名作「HERO」のジェット・リーですよ。堂々としてます。

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20世紀少年 第1章

堤幸彦監督。唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子。録画で。

浦沢直樹の大ヒットSFの映画化。カルト集団を率いる「ともだち」に対抗し、地球を救うため立ち上がるケンヂと仲間たち。

とりあえず第1章です。原作漫画を読んでないんで、子供時代と世紀末を行ったり来たりするストーリー展開、これでもかという豪華キャスト続々登場にちょっとついて行けない。あれれ、黒木瞳まで出てるよ、おい。

でも、面白かった! やっぱり堤幸彦はテンポがいい。脚本は福田靖だし。荒唐無稽な謎の積み重ねなんだけど、独りよがりにならないで、れっきとした大人であるはずのケンヂの戸惑いとか、それでも心の底に残っている少年っぽさとかが、しっかり響いてくる。ギターを持ち出してT・レックスをかき鳴らすところ、それから、正義の味方を信じるシーンがウルトラマンと重なるところが、すごく格好良くてワクワクさせる。

ケンヂは1959年生まれ、仲間と秘密基地を作ったのが小4の1969年、事件が動き出すのが38歳となった1997年。人々が科学や未来を信じていた時代と、山一破綻など金融危機で自信喪失に陥る「現代」との対比が鮮やかだ。

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