アリー/スター誕生

主題歌の大ヒットが懐かしい、1976年バーブラ・ストライサンド主演「スター誕生」の、また37年の元ネタからは3度目のリメーク。主演レディー・ガガ様の、切なくもパワフルな歌唱力を楽しむ。機内で。
片田舎のウエイトレス・アリー(ガガ)が、カントリーロックの大物ジャクソン(監督でもあるブラッドリー・クーパー)に見いだされ、結婚すると同時に、ポップスターの階段を上がっていく。痛快だし、ライブシーンなどにガガの才能と温かみが溢れて、説得力がある。
一方、ジャクソンはアリーと出会う前からアル中という設定。支えていた兄とも決裂しちゃって、泥沼にはまっていく。痛々しいものの、ダメな感じは色っぽいな。
音楽プロデュースはルーカス・ネルソン。ダイアン・ウォーレンらが曲を提供してるようです。

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グレイテスト・ショーマン

大物ヒュー・ジャックマン主演のミュージカル。19世紀の伝説のサーカス興行師P・Tバーナムの半生が題材とあって、いかがわしさ満載。今の時代に合ってるのか合ってないのか微妙だけど、フリークたちの爆発力は爽快だ。機内で。
「ラ・ラ・ランド」のベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが担当した楽曲は、期待通りキャッチー。CM出身、初メガホンのマイケル・グレーシー監督が、酒場などレトロなセットで、精緻かつキレキレのダンスシーンを繰り広げる。空中ブランコの浮遊感が効果的です。
バーナムって何故か占いをあたってる、と思っちゃう「バーナム効果」の語源となった人なんですね。短く言うと山師。でも、ジャックマン君なら許せちゃうんだなあ。

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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

2015年アカデミー賞作品賞の話題作を、機内で。評判通りすっごく面白かった~ 長回しにしか見えない驚異的な編集力で、妄想シーンを含めドキュメンタリーのような味わいだ。メキシコ出身の曲者アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の才気が光る。
まずブロードウェーの舞台に渦巻くエゴが重層的。欠点だらけで愛らしい俳優たち、次々起こるトラブルに振り回されるプロデューサー、鼻持ちならない女性ベテラン評論家、無責任な大衆。
さらに舞台という芸術への尊敬や、夫婦、親子の不器用な愛情、SNSの怖さなどがからまる。題材となる舞台作品が、気取ったレイモンド・カーヴァー原作というのも面白い。
ユーモアもあって、追い詰められたリーガンがなんと下着姿で、懐かしいブロードウェーの人混みを歩くシーンは爆笑。そして妄想のバードマンと朝のNYを飛翔するシーンの爽快感は、映画的感興に満ちる。
落ち目のヒーローもの俳優リーガン役、「バットマン」のマイケル・キートンがまずいい味。薬物依存を克服しようと付き人をつとめる娘サム役、「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンが、繊細で素晴らしい。才能があるが問題児マイクにエドワード・ノートン、マイクの恋人レズリーにナオミ・ワッツ、リーガンの元妻にエイミー・ライアンと、安定感がある。

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ONCE ダブリンの街角で

アイルランド旅行から戻った復習編は、ジョン・カーニー脚本・監督の音楽映画。映画を元にしたミュージカルを来日で観たことがあるけど、改めて切ない楽曲が染みる佳作です。録画で。
お話はシンプルな大人のラブストーリー。30代のストリート・ミュージシャン(グレン・ハンサード)が、チェコ移民の花売り女(マルケタ・イルグロヴァ)と出会って勇気を得、デモテープを作る。不器用に恋心を寄せるものの、マルケタは離れていた夫を選択。グレンは思いを残しつつ、夢を追ってロンドンに旅立つ。
制作費15万ドル、街頭では許可なく望遠レンズを多用したという映像はドキュメンタリータッチ。主演2人が作って歌う手作り感も好ましい。グレンのアパートで撮影したというパーティーシーンの歌の素朴さ、レコーディング後にエンジニアが「カーステ・テストだ」と言い出して、海岸へドライブするシーンの解放感も印象的。グレンを送り出す、修理工の老父が泣かせます。

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麦の穂を揺らす風

アイルランド予習シリーズの最後は、とびきり重い1作となりました。ケン・ローチ監督がアイルランド独立戦争と内戦の過酷さを、ドキュメンタリータッチで容赦なく描き、カンヌでパルム・ドールを受賞。
ロンドンで医師になるはずだったデミアンは、イギリス軍の暴力に耐えかね、IRAのゲリラ戦に身を投じる。恋人の弟の死、兄テディが受ける目を背けたくなる拷問… そして幼馴染の処刑で自ら手を下したことが、決定打となって一線を超えてしまう。
心を失っていくキリアン・マーフィーの、虚ろな目が凄まじい。独立戦争よりもその後の内戦のほうが、犠牲者が多いと言われる悲劇を、兄弟の対立という究極のかたちで突きつける。
女性運動家らとの論争や、神父とのやりとりのシーンなどに、植民地政策がもたらす負の遺産、問題の複雑さがずっしり。できるだけ多くの人に観てほしいかも。

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静かなる男

超私的アイルランドを知るシリーズ第3弾として、アイルランド気質がわかると司馬遼太郎センセイオススメのDVDを購入。ジョン・フォードが1952年に4度目のアカデミー監督賞に輝き、今もこの最多記録は破られていないという名作喜劇だ。アイルランド移民の13人兄弟の末っ子である巨匠の、自らのルーツへの愛情が画面から溢れ出てます。
自然の美しさは共通だけど、英国の屈折たっぷり「ライアンの娘」とはうってかわって、ハチャメチャでとにかく明るい。おせっかいで、おしゃべりで、隙きさえあれば呑んで歌って、喧嘩しちゃう。農村なんだけど、この人情はじゃりン子チエ感覚だな。
舞台は駅まで8マイルもある村イニスフリー(撮影は西部の村コング)。アメリカ育ちのショーン(ジョン・ウエイン)が帰郷して生家を買い戻し、近所の勝ち気な美女メアリー・ケイト(モーリン・オハラ)と恋に落ちる。生家を手に入れ損ねた、高圧的な兄ダナハー(ヴィクター・マクラグレン)がヘソを曲げ、周囲の応援でなんとか結婚にこぎつけるものの、持参金問題で揉めちゃう。実はアメリカで有名ボクサーだったショーンは、事故が元で暴力を忌避する「静かなる男」になったのだが、メアリー・ケイトを失うことには耐えられず、ついにダナハーとド派手な殴り合いになって、村は上へ下への大騒ぎ。しかし喧嘩で男同士に友情が芽生え、カラッとハッピーエンドに。
野良競馬の興奮や女たちの精一杯のお洒落ぶり、村の男たちが当然のように、新居に家具を運んでくれたりする温かさ、素朴さが微笑ましい。持参金を重視する風習は古臭いものの、妻が使用人ではない証なのだ、という現代的な意味をもたせている。大詰めで、村じゅうを駆け巡るファイトシーンのスペクタクルと、牧師も警官も止めに入るどころか、どっちが勝つか賭け始めちゃうのが、文句なく楽しい。
村上春樹のエッセイで、「僕は何かすごくいやなことがあると、ビデオで『静かなる男』を見ることにしている」と書いていて、びっくり。なるほどなあ。そしてジョン・ウェイン。実はしっかり観たことなかったんだけど、無骨で格好いいです。

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ライアンの娘

アイルランドを知るシリーズ第2弾で、録画を発掘。イギリスの巨匠デヴィッド・リーンが、「戦場にかける橋」「アラビアのロレンス」で2度のアカデミー監督賞に輝いたのちに手がけた。とにかくアイルランドの自然の映像美に圧倒される。
のっけから壮大な「モハーの断崖」で、ヒロインの帽子が風に飛ばされちゃうんだもの。延々と続く浜辺の足跡(どうやって撮ってるのか?)、殺伐とした丘陵と逆光の人影、背景を彩る見事な雲、激しい嵐と大波(どうやって撮ってるのか??)…と、これがCGじゃないなんて信じられません。

お話をあえて要約しちゃうと、海辺の寒村(設定は東部・撮影は西部&南ア)で、美しい若妻ロージー(サラ・マイルズ)が駐留英国将校ドリアン(クリスファー・ジョーンズ)と許されない恋に落ち、村人に激しく指弾される。しかし年の離れた教師の夫チャールズ(ロバート・ミッチャム)が、深く傷つきながらも妻を救い出すという、大人の苦い人間ドラマ。たったこれだけと侮るなかれ、官能的な密会シーンあり、嵐のスペクタクルあり。なんと3時間以上、インターミッション付き!

決して単純な不倫ものでないのは、時代設定に1次大戦中、アイルランドが英国の植民地支配からの独立を目指して弾圧された、イースター蜂起(1916)の直後、という歴史背景があるから。古臭く閉鎖的な村で、知性や都会的な男性にどうしようもなく惹かれてしまうロージーの罪に、まず説得力がある。そんなロージーを追い詰めるのは、因習に加えて、村人の激しい反英感情、ドイツの支援による独立闘争の気運の高まりだ。
さらに将校がロージーを求めるのは、大戦の悲惨な前線のトラウマと、そこへ戻される恐怖から逃れるため。ロージーが不倫だけでなく、英国将校に内通したと断罪されるのは、実は酒場を営む父ライアン(レオ・マッカーン)が内通していて、それをかばうため。うーん、複雑だぞアイルランド。
こうした心理のアヤ、支配・被支配の関係までも、ほとんどセリフで説明せずに、俳優の表情の動きだけで緻密に描くのが凄い。今どきの感覚だとかったるいんだけど、これこそ映画にしかできない表現だなあ、と感嘆する。

とにかくロージーが色気たっぷりで、村におさまらないのは仕方ないんじゃない、と思わせる。実直なだけで退屈に見えたチャールズが、大詰めで示す勇気と哀愁が胸に迫り、だからラストの神父(トレヴァー・ハワード)の救いの一言が、余韻を残します。良心の人・神父の存在感もアイルランドならでは、かな。狂言回しでハンディを持つマイケルのジョン・ミルズは、一言も喋らずにアカデミー助演男優賞を獲得したそうです。
反乱軍登場シーンで流れる勇壮なメロディーなど、秀逸な音楽はモーリス・ジャール。

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マイケル・コリンズ

アイルランドに関心をもってDVDを購入。独立の英雄コリンズの伝記だ。主演は長身のリーアム・ニーソンでぴったり。賢くて、特に31才で凶弾に倒れたから人気なのかな。竜馬、ゲバラのイメージか… ドキュメンタリーもついていて、ダブリン在住で「クライング・ゲーム」のニール・ジョーダン監督が史実とフィクションなんかも解説していて、勉強になる。
物語は1916年イースター蜂起の挫折から始まる。コリンズは親友ハリー・ボランド(エイダン・クイン)らと対英テロを組織し、銃弾を節約しろ、と言ったりして、リーダーシップを発揮する。このへんはまるっきりギャング映画みたい。市警のブロイ(スティーブン・レイ)の命がけの協力も得て、MI5のカイロ・ギャングを殲滅するまでは痛快なんだけど、1920年、血の日曜日事件が起きる。装甲車がクローク・パークに乗り入れ、静寂のなか選手がシュートを決めるといきなり無差別銃撃が始まる、という演出だ。
カスタム・ハウスの敗戦後、対英交渉に派遣されるあたりから閉塞感が濃くなる。盟友のはずの大統領エイモン・デ・ヴァレラ(アラン・リックマン)はビッグ・フェラーと呼ばれたコリンズの人気に嫉妬し、損な交渉を引き受けさせたのだ。嫌な奴! 1922年にかろうじて英愛条約が議会で批准され、自治領のアイルランド自由国が誕生。ダブリン城の主権引継で「700年待たされた」の名シーンがあるけど、条約に不満な反対派と泥沼の内戦に突入しちゃう。独立戦争より多くの犠牲者を出したというから、悲惨です。宗教というより階層の対立があったのかな。
コリンズは敵対してしまったハリーの死などを契機に、不毛な闘いを終結させるべく、故郷コークでのデ・ヴァレラとの会談に向かい、銃撃に倒れる。前夜に因縁の2人がニアミスし、デ・ヴァレラはコリンズの真情に涙するものの、伝令役の無名の若者が銃撃を企む、という解釈です。かつてハリーとの3角関係だった気丈な婚約者キティ(ジュリア・ロバーツ)が、結婚式のドレスを準備していた、という終幕が悲しい。
コリンズは実際、ロンドン出稼ぎ時代の金融知識で戦費を調達したり、パリッとスーツを着て自転車に乗り回したり、テロリストらしからぬ格好良さで、映画以上にモテたみたい。対英交渉では、かのチャーチルさえ4番手だった手練れたちに初めからなめられていて、「この条約は死刑宣告」と自覚するあたり、悲壮感が漂うのも女心をくすぐります。
その後のアイルランドといえば、ようやく1938年に独立国、1949年に完全な共和国化を達成したものの、北アイルランドの分離/統合を巡る苛烈な紛争が続いたのは周知の通り。映画の公開時はIRA暫定派が休戦とテロ再開の間で揺れ動いていたタイミングで、ヴェネチアで金獅子賞をとったのはそういう背景もあったんでしょう。1998年にベルファスト合意(グッドフライデー)、2005年にIRAの武装解除宣言に至ったけれど、今もBrexitで国境管理が焦点になっているし、すべては決して過去の歴史ではないんだなあ。

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ボヘミアン・ラプソディ

応援上映でブームとなったヒット作をシネコンで。ボーカル、フレディ・マーキュリーの苦悩の人生を描く。テンポの良い展開、ラストの壮大なウェンブリー・スタジアムのライブエイドと、「ユージュアル・サスペクツ」の監督ブライアン・シンガーの腕が冴える。
小学校高学年から中学という「クイーン世代」真っ只中としては、なんといっても名曲連打の力が随一。オペラ好きというのもイメージぴったりだ。
とはいえクイーンといえば王子様ロジャー・テイラーと哲学者ブライアン・メイと思っていたし、フレディは単にインド系としか認識してなかったので、実はザンジバル島(イギリス保護区、現在はタンザニア)生まれのペルシャ系パールシー(ゾロアスター教徒、タタですね)で、インドの寄宿学校で育ち、ザンジバル革命の混乱からイギリスに移ったという複雑さにびっくり。移民、宗教、LGBTと現代的な要素がたっぷりで、スターゆえの人生のゆがみが悲しい。
ステージングがそっくりで、絶賛フレディ役のラミ・マレックのほか、温かく見守る元恋人メアリーのルーシー・ボイントンや父母、猫たちが印象的。最後の恋人ジム・ハットンのアーロン・マカスカーもいい味でした~

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13デイズ

1962年キューバ危機を、なんとか核戦争を回避しようとするケネディの特別補佐官ケネス・オドネル(ケビン・コスナー)の視点で描く。「カクテル」のロジャー・ドナルドソン監督。録画で。

キューバ関連だし、朝鮮半島情勢の連想もあって鑑賞。家族を愛するヒーローのケビン・コスナーVS開戦を主張する軍幹部という構図が中心だ。肝心の、いかにして開戦を回避したか、はソ連の内幕を描かないとわかりにくいかな。
盛り上がるのは、ちょっと馬鹿にされてた国連大使アドレー・ユーイング・スティーブンソンが、大演説で国際社会を味方につけるところ。こういうソフトパワーは、アメリカ民主党系の理想なのかもしれない、なんて思っちゃう。ケネディが結局はオドネルよりも、実弟で司法長官のロバートのほうに、精神的に頼る感じがちょっと寂しい。

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