罪の声
原作は歴史に残る未解決犯罪、グリコ・森永事件で、脅迫電話の「子供の声」に焦点を当てた塩田武士のミステリ。その秀逸な着想を、しみじみ丁寧に描いた佳作だ。142分がちっとも長くない。
わけもわからず犯罪に加担してしまった者の葛藤。3人目の子供・曽根役の星野源の、優しさや恐れの繊細な表現に惚れ惚れする。才能ある人っているんだなあ。TBSドラマでお馴染み野木亜紀子脚本、土井裕泰監督。録画で。
2人目の子供・生島総一郎を演じる宇野祥平が、曽根と対照的な人生の悲惨を体現して怪演だ。一度踏み外してしまった者にとって、日本社会がいかに冷酷か。すんでのところで救い出されて、あの「罪の録音」が救いに転じる展開に涙。
もう一つの軸に、希代の劇場型犯罪に踊ったメディアの罪というものがあって、ストーリーが多角的になっているのも、いい。あのとき果たして、脅迫状が届くのを待ちわびなかったメディアがあったろうか。発生30年を機に事件を発掘していく記者・阿久津の小栗旬が、じわじわと曽根の探索に近づいていく過程のサスペンス、そして彼自身の悩み、成長の物語に引き込まれる。ちょっと猫背、独特のちゃらさがいいバランスだ。
ほかの出演陣も説得力たっぷりで、曽根の母に梶芽衣子(わけありでないはずがない)、回想の父に尾上寛之(誠実)、鍵を握る叔父に宇崎竜童(雰囲気あるなあ)、重要な証言をする板前に橋本じゅん(曲者)、総一郎の母に篠原ゆき子(ひたむき)、社会部デスクに古舘寬治(曲者2)ら。
謎解きに加え、ついには哀愁のイギリスにまで至るロードムービー的なスケール、そして凝りまくりの「昭和」再現も見事。これぞ映画の醍醐味という感じ。ちなみに犯人グループの造形は、有力な説のひとつらしいです。事件は2000年にすべての公訴時効が成立。いつか真相を語る人が現れるのだろうか…
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