竜とそばかすの姫
知人が声優で出演したアニメ「竜とそばかすの姫」を鑑賞。押田守監督。突っ込みどころはあるけど、傷ついた少女が自らを解放するドラマにジンとした。シネコンで。
高知の田舎町に住むすず(中村佳穂)は、幼いときに母を亡くし引っ込み思案になっていたが、世界50億人が参加する仮想空間Uで歌姫ベルに変身、大人気を博す。Uの暴れ者・竜(佐藤健)と心を通わすが、彼は心ない「正体探し」に追い詰められていき…
静かにすずを見守る人々の、語りすぎない距離感がいい。豪華キャストの父・役所広司なんかほとんど台詞無いし、数学オタクのチャーミングな親友ヒロちゃんの幾多りら(YOASOBI)も歌わない。しのぶくん成田凌に不思議な色気があり、カヌー部カミシンの染谷将太と吹奏楽部の人気者・ルカちゃんの玉城ティナが微笑ましい。合唱隊は森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、声が深い中尾幸世。
川や雨、雲のイメージが象徴的に使われるものの、映像は異なる作風のパッチワークで、ちょっと戸惑う。旬の才能の高度分業が、アニメの最先端なのかなあ。
現実世界は青山浩行・作画監督で新海誠ばりのリアルさ。一方、Uは作画監督が山下高明、プロダクションデザインが建築家エリック・ウォンで壮大なSF。そしてベルのキャラクターデザインはディズニーのジン・キムで、お城とかもまるっきり「美女と野獣」。うーむ。曲のクリエーターも複数起用していて、歌声ワンフレーズの公募企画まで。ちなみにメーンテーマは旬の常田大希。
ネット世論の暴力はありがちだけど、遠隔地にも伝わる真心というポジティブな面も描く。ネットはもう無かったことにはならないからね。
面白いだけに、クライマックスの虐待への対処に、違和感がぬぐえないのは残念。ここを丁寧にすると、流れが止まっちゃうということか。もったいないかな。カンヌのオフィシャルセレクション「カンヌ・プルミエール」部門でワールドプレミア上映されたそうです。
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