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2021年8月

サマー・オブ・ソウル

アレサ、ジャニスときて、こちら。1969年、NYハーレムで30万人を動員したフリーライブ・シリーズ「ハーレム・カルチャラル・フェスティバル」のドキュメンタリーだ。カッコいいパフォーマンスのジャンルは、ゴスペル、モータウンからラテン、ジャズまで幅広いけど、共通項はブラック。ハーレムの混沌と夏の日差しが、スクリーンに溢れて熱い。監督はアミール”クエストラブ”トンプソン。日比谷のシネコンで。

当時のニュース映像や丹念な証言インタビューで、社会状況を語る手際が秀逸。68年4月にキング牧師、6月にケネディ暗殺が起こり、11月にニクソンが当選。6~8月の6日間のフェスの最中、7月20日にもたらされたアポロ11号の人類史的ニュースに、「月に行くカネがあったら恵まれない人に使え」と反発する観客の声が強烈だ。

ライブ映像のインパクトは文句なし。ブルースマンB.B. King「Why I Sing The Blues 」の悲しみ、伝説Mahalia JacksonとMavis Staples「Precious Lord, Take My Hand」の絶唱、闘士Nina Simone「To Be Young, Gifted & Black」の怒りと誇り。 50年たって、世界はどれだけましになったのか。だからこそウッドストックにも出演したというSly & The Family Stone「Everyday People」の革新に、思わず喝采しちゃう。人種もジェンダーも超えていく、音楽のパワー。

共和党の異端児ジョン・リンゼイNY市長とブラック・パンサーの関係、ニューヨークタイムズの白人編集者エイブ・ローゼンタールの決断から、アフリカンファッションまで、情報量多過ぎ。おまけ映像( Stevie Wonder19歳!のやんちゃぶり)もあるから、エンドロールで席をたたないでね。サンダンス映画賞で審査員大賞受賞。サーチライト・ピクチャーズ製作。

以下、セットリストです。

Drum Solo / It’s Your Thing – Stevie Wonder
Uptown – Chambers Brothers
Why I Sing The Blues – B.B. King
(Knock On Wood – Tony Lawrence and The Harlem Cultural Festival Band)
Chain Of Fools – Herbie Man ftg. Roy Ayers
(Give A Damn – Staples Singers)
Don’tcha Hear Me Callin’ To Ya – Fifth Dimension
Aquarius / Let The Sunshine In – Fifth Dimension
Oh Happy Day – Edwin Hawkins Singers ftg Dorothy Morrison
Help Me Jesus – Staple Singers
Heaven Is Mine – Prof. Herman Stevens & The Voice Of Faith
Wrapped, Tied & Tangled – Clara Walker & The Gospel Redeemers
Lord Search My Heart – Mahalia Jackson & Ben Branch
(Let Us Break Bread Together – Operation Breadbasket)
Precious Lord, Take My Hand –Mahalia Jackson & Mavis Staples
My Girl – David Ruffin
I Heard It Through The Grapevine – Gladys Knight & The Pips
Sing A Simple Song – Sly & The Family Stone
Everyday People – Sly & The Family Stone
Watermelon Man – Mongo Santamaria
Abidjan – Ray Barretto
(Afro Blue – Mongo Santamaria)
Together – Ray Barretto
It’s Been A Change – Staple Singers
Shoo-Be-Doo-Be-Doo-Da-Day – Stevie Wonder
Ogun Ogun – Dinizulu & His African Dancers & Drummers
(Cloud Nine – Mongo Santamaria)
Hold On, I’m Coming – Herbie Mann & Sunny Sharrock
It’s Time – Max Roach
Africa – Abbey Lincoln & Max Roach
Helese Ledi Khanna – Hugh Masekera
Grazing In The Grass – Hugh Masekela
Backlash Blues – Nina Simone
To Be Young, Gifted & Black – Nina Simone
Are You Ready – Nina Simone
Higher – Sly & The Family Stone
Ending credit roll Have A Little Faith – Chambers Brothers

 

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竜とそばかすの姫

知人が声優で出演したアニメ「竜とそばかすの姫」を鑑賞。押田守監督。突っ込みどころはあるけど、傷ついた少女が自らを解放するドラマにジンとした。シネコンで。
高知の田舎町に住むすず(中村佳穂)は、幼いときに母を亡くし引っ込み思案になっていたが、世界50億人が参加する仮想空間Uで歌姫ベルに変身、大人気を博す。Uの暴れ者・竜(佐藤健)と心を通わすが、彼は心ない「正体探し」に追い詰められていき…

静かにすずを見守る人々の、語りすぎない距離感がいい。豪華キャストの父・役所広司なんかほとんど台詞無いし、数学オタクのチャーミングな親友ヒロちゃんの幾多りら(YOASOBI)も歌わない。しのぶくん成田凌に不思議な色気があり、カヌー部カミシンの染谷将太と吹奏楽部の人気者・ルカちゃんの玉城ティナが微笑ましい。合唱隊は森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、声が深い中尾幸世。

川や雨、雲のイメージが象徴的に使われるものの、映像は異なる作風のパッチワークで、ちょっと戸惑う。旬の才能の高度分業が、アニメの最先端なのかなあ。
現実世界は青山浩行・作画監督で新海誠ばりのリアルさ。一方、Uは作画監督が山下高明、プロダクションデザインが建築家エリック・ウォンで壮大なSF。そしてベルのキャラクターデザインはディズニーのジン・キムで、お城とかもまるっきり「美女と野獣」。うーむ。曲のクリエーターも複数起用していて、歌声ワンフレーズの公募企画まで。ちなみにメーンテーマは旬の常田大希。

ネット世論の暴力はありがちだけど、遠隔地にも伝わる真心というポジティブな面も描く。ネットはもう無かったことにはならないからね。
面白いだけに、クライマックスの虐待への対処に、違和感がぬぐえないのは残念。ここを丁寧にすると、流れが止まっちゃうということか。もったいないかな。カンヌのオフィシャルセレクション「カンヌ・プルミエール」部門でワールドプレミア上映されたそうです。

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