グリーンブック
2019年アカデミー作品賞を獲得したコメディ。黒人の天才ジャズピアニスト、ドクター・ドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)と、ブロンクス育ちのイタリア系用心棒トニー・ヴァレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)の心の交流が温かい。手練のピーター・ファレリー監督。録画で。
1962年ジム・クロウ法下のアメリカで、黒人ミュージシャンがあえて、2カ月の南部ツアーに出る。腕っぷしを見込まれ、運転手に雇われたのがトニー。取り澄ましたインテリのドン(なにせ自宅はカーネギーホール階上の高級アパート、イタリア語も堪能)と、喧嘩上等ほぼチンピラのトニーという水と油のぶつかり合いが、まず可笑しい。
ひ弱ながら誇りを失わず、人種とゲイ差別を耐えるドンの凛とした姿。ケネディ家ともお友達です。対するトニーは貧しい育ちで大食いで粗野だけど、強烈な反骨精神の持ち主。いよいよってとき、ためらいなく威嚇射撃しちゃうシーンが格好いい。
フライドチキンやら、旅先から妻にあてる手紙やら、アップライトピアノに置いたウィスキーグラスやら、二人が違いを乗り越え理解し合っていくプロセスの、小道具が洒落てます。もちろん全編を彩る音楽も。ショパンからご機嫌ビーバップやソウル、エピソードとして語られるナット・キング・コールまで。音楽はクリス・バウワーズ。
黒人を取り巻く苦境は、50年たっても決して払拭されていない。「悪い警官」ばかりではない、というあたり、甘い!って憤る人も多いだろうけど、エンタメとして救いがあっていい。人生は複雑。でも人は決して孤独じゃない。クリスマスはみんなで祝うものなんだ。
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