アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン
ソウルクイーンの魂のAmazing Graceに、泣いたー。300万枚以上のヒットアルバムとなった1972年「Amazing Grace(至上の愛)」の、2夜にわたる公開録音を追ったドキュメンタリー。ル・シネマで前日19時以降にオンライン予約して鑑賞。
これがグランマのブラックチャーチというものか。会場はロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で、アレサはクワイアをバックに、説教台とかで歌う。当時29歳、ナンバーワンヒットを持つスターなのに表情は固く、少女のよう。これはライブではない。ただ神に向かって「私はここにいる!」と声をあげ、着飾った聴衆たち(高アフロ率!)も、それぞれ自分のこととして陶酔していく。
アレサの声ってシャウトとか、ちょっと甲高い気がするけど、それくらいのパワーがゴスペルには必要なんだろうなあ。長~いフェイクは、さしずめ「りんご追分」。この才能、圧巻です。
冒頭On Our Wayで、サザン・カリフォルニア・コミュニティ・クワイアが一列になって歌いながら入場するのに、まずニヤニヤ。歌が始まってクワイアが後方で座ってるのは意外だったけど、盛り上がると立ち上がったり、踊ったり(映画「ブルース・ブラザーズ」でジェイムズ・ブラウンが、今作でも演奏されるOld Landmarkを歌うシーンで、バックを務めたそうです)。ディレクターの若いアレクサンダー・ハミルトンがガンガン踊るのは、いかにもゴスペル! 格好いいPrecious LordとYou've Got a Friendのメドレーは、ハミルトンのアイデアだったとか。
現在のクワイアスタイルを作ったというジェイムズ・クリーブランドが仕切り、ピアノや、アレサとの掛け合いを披露。ボス感満載なのに、Amazing Graceで号泣しちゃうんだよね。
2夜に登場するアレサパパの、親ばかスピーチはご愛嬌。隣に公然のパートナーで、アレサに影響を与えたというクララ・ウォードが陣取り、ラストのNever Grow Oldでは興奮したママ、ガートルード(マザー・ウォード)を取り押さえるシーンまで。家族揃って、まあ、なんというか。
バーナード・バーディ(ドラム)らバンドもドリームチームで、印象的なオルガンのケニー・ラバーはいきなりの代打ちだったとのこと。2夜の聴衆には、なんとミック・ジャガーとチャーリー・ワッツが。
この貴重な映像は、ワーナーが撮影を依頼したシドニー・ポラックの知識不足で映像と音をシンクロできず、長くお蔵入りになっていたんだけど、当時アレサを手掛けたジェリー・ウェクスラー(アトランティック・レコードのプロデューサー)の弟子にあたるアラン・エリオットが権利を買い取り、数年にわたってデジタル技術を駆使して完成。2018年のアレサ死去後になんとか遺族と合意して、公開にこぎつけたそうです。16ミリカメラ5台の映像は、ピンぼけもあって乱れているけど、それだけにリアルです。
人生は理不尽で、辛いもの。だから歌う!
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