ジョーカー
稀代のヴィラン(悪党)ジョーカーは、いかにして生まれたか。評判通り全編、主演のホアキン・フェニックスが怪演しまくる。壊れた笑い、3カ月で20キロ減量したという痛々しい体躯での、ゆっくりとしたダンスが生み出す陶酔… 圧倒的で過激な負のエネルギーが、とにかく重い。重いんだけど、目を離せない。凄い俳優だ。
残虐性だけでなく、不適合と孤独、妄想、次第に突きつけられる幼少時の悲惨な体験など、ジョーカーを形作る要素はどれも現実にあることだ。なんとか希望をもとうともがくたび、拒絶に遭う。アメコミのキャラクターを超え、隣にいてもおかしくない「人間」と気付かされて、ぞっとする。
終盤、デニーロ演じる大物テレビ司会者の末路は、豊かな者の「良識」の虚しさを象徴。そして忘れられた者たちの怒りが吹き荒れる。トランプ現象末期を知った今、なおさら切実なシーンだ。
ラストにバッドマン誕生を示唆するものの、これからの長い闘いを思わせるだけで救いはない。つくづく、こんな暗い映画、よく作ったなあ。でもスピーディーで説得力がある。実際、反社会性を糾弾されつつもヒットし、ヴェネチア映画祭金獅子賞、ホアキンはアカデミー賞主演男優賞を獲得した。監督は「アリー」のトッド・フィリップス。
「タクシードライバー」を彷彿とさせる雰囲気と、デニーロがさすがの貫禄を見せるのが、映画好きにとってはご馳走ですね。録画で。
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