パラサイト 半地下の家族 モノクロVer.
ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ主演、アジア映画初のアカデミー作品賞作&韓国映画初パルムドール作をモノクロバージョンで。ブラックコメディ・スリラー、って紹介だけど、ホント、あらゆる映画的楽しみがぎゅっと詰まってて、高評価がうなづけた。録画で。
前半はテンポの良いスティング。半地下に住む全員プーのキム一家が、息子(チェ・ウシク)、娘(パク・ソダム)の策略により、あれよあれよと父(ガンホ)、母(チャン・ヘジン)まで、IT長者パク夫妻(イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン)の豪邸に職を得る。留守の間に上がりこんで、嵐の庭を眺めながら、酒盛りに羽目を外すまでは痛快だ。
そこへ追い出した家政婦(イ・ジョンウン)が訪れ、なんと豪邸の地下に夫(パク・ミョンホン)も隠れ住んでいたとわかると、事態は一転ホラーに。互いの生き残りをかけた壮絶な乱闘、その後の脱出劇はアクション満載だ。なんとか半地下の自宅にたどり着くと、豪雨で下水が氾濫。胸まで迫る浸水シーンのスペクタクル、高台から押し寄せる水の暴力の圧倒的な残酷さ、絶望感。翌朝は台風一過、何も知らないパク夫妻は晴れ晴れと、ガーデンパーティの準備にキム一家を呼び出しちゃう。避難所で雑魚寝との、なんという境遇の落差か。「地下派」の暗い情念がついに爆発し、パーティーはタランティーノばりの大惨事に…
カラー版をみてないのだけど、モノクロだから終盤の血糊のエグさは控えめで、むしろ光の表現が際立つ印象。息子が初めて高台の高級住宅街を訪れるシーンや、広々した豪邸のリビングに踊る陽光が素晴らしい。
もちろん俯瞰を多用した、振れ幅の大きいカメラワークにも引き込まれる。高低差が端的に表す貧富がリアルで、目が離せない。
貧しいなりに、したたかに生き抜いていたガンホやチェ・ウシクが後半、どんどん表情が暗くなっていくのがシリアスだ。能天気で騙されやすい妻チョ・ヨジョンは、戸田恵梨香似でチャーミング。お嬢様のチョン・ジソも目が大きくて可愛い。それにしてもつくづく、知らないってことは罪深いです。
たまたま「天気の子」と続けて観たので、水の位置づけの差は面白かったな。怒りと諦念と、と思っちゃうのは、ステロタイプかもしれないけど。
追記:後日、カラー・吹き替え版も録画で。ラストのファンタジーの切なさが、より胸に迫る印象。凄い映画です。
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