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2020年7月

劇場

又吉直樹の2017年の長編を、盤石の蓬莱竜太脚本、行定勲監督で映画化。主演の山崎賢人、松岡茉優の切なさが素晴らしい。
コロナで4月公開が延期となり、配給を松竹・アニプレックスから吉本興業に切り替えたうえで、7月に公開と同時にAmazonプライムビデオで世界同時配信に踏み切って話題となった。その配信で鑑賞してみた。

ストーリーはお馴染み下北沢が舞台。小劇場の劇団で戯曲を書く永田(山崎)と、服飾専門学校に通いながら女優を夢見る沙希ちゃん(松岡)の青春の恋と挫折。
山崎の面倒くさ過ぎる自意識、理屈っぽさと才能に対する強烈なコンプレックス、松岡の可愛さ、健気さは、まるっきり昭和の私小説。だけど役者2人の文句なしの色気、そしてラストの舞台につながる演出が見事だった。曽我部恵一のギターも染みます。
劇団仲間に顔立ちがはっきりしている寛一郎(佐藤浩市の息子さん)、何かと気にかける元劇団員でライターの青山にハスキーな伊藤沙莉。才能あふれる劇作家にKingGnuのボーカル、井口理がちょこっと登場し、劇場の観客でなぜかケラさん、吹越満らも(本人役)。

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ブラッド・ワーク

自宅の古いDVDから発掘した、クリント・イーストウッド監督・主演の乾いたハードボイルド。真相に迫っていく中盤に意外性があって、なかなか面白い。
「ミスティック・リバー」の前年の公開なんですねえ。知らなかったな。録画で。
マイクル・コナリー原作で、脚本は「LAコンフィデンシャル」のブライアン・ヘルゲランド。マスコミの寵児だったFBIプロファイラー、マッケイレプ(イーストウッド)は、サイコなシリアルキラーを追う途中、心臓発作をおこして退職。2年後、一人気ままに暮らすクルーザーに、ラテン美女グラシエラ(ワンダ・デ・ジーザス)が訪ねてくる。「妹の事件の犯人を突き止めて」との頼みを断れない事情があり、隣の船でぶらぶらしているヌーン(ジェフ・ダニエルズ)を雇って調べ始めると、一見行きずりのような事件の裏に、おぞましいつながりが…

すでに70代!の御大、大病から回復途上という設定もあって、相当ヨロヨロです。にもかかわらず、小さな手がかりを見逃さない冴えた推理に加えて、突然トランクから銃を持ち出して犯人の車に発砲、なんてアクションも披露。ガンマンだなあ。終盤のラブシーンはとってつけた感満載だけど。
ワンダはウエイトレスをしながら、妹の忘れ形見の少年を面倒みていて、ラストシーンが壮絶。ほかにも御大を叱っちゃう医師アンジェリカ・ヒューストン(アダムス・ファミリー!)、市警と張り合う保安官の黒人女性ティナ・リフォードと、女性たちがきりっと勝ち気で格好いい。

 

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殺し屋

腕利きながら、年をとってボロボロの殺し屋アッシャーが、愛する人のために闘う。
ストーリーはベタなんだけど、乾いた絵づくり、NYの街並み、無口だけどニヤリとさせるセリフが格好いい。ハードボイルドは字幕が楽って言うけど、これはこれで難しいよね。マイケル・ケイトン・ジョーンズ監督。DVDで。
主演のロン・パールマンがとにかくいかつくて、ヨタヨタしてて哀愁が漂う。恋人もごつめのファムケ・ヤンセンでバランスは悪くない。敵役に曲者リチャード・ドレイファス。
恋人がバレエ教師という設定で、BGMに美しいクラシックが挟まる。この落差は巧いなあ。

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

脚本・監督クエンティン・タランティーノのB級映画愛あふれる1作。文字通りのハリウッドスター、レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピットの初共演作にして、2人の堂々のおっさんぶりに笑っちゃう。しかもラストはきっちりスターぶりを見せつけるんだもの。さすがです。録画で。
ストーリーの大枠は、1969年にロマン・ポランスキーの妻で女優のシャロン・テートが、カルト集団チャールズ・マンソン・ファミリーに殺害された事件の歴史改変劇。終盤、事件当日に近づいていくカウントダウンがスリリングだ。
そこまではひたすら、カウンターカルチャーの台頭で時代遅れになった西部劇スター、リック・ダルトン(レオ様)とその相棒スタントマン、クリフ(ブラピ)の哀愁、諦め、消えない矜持と友情を描いて、妙にしみじみする。
レオさま渾身の敵役に迫力があり、アイスペールでマルガリータをぐびぐび呑むダメ男ぶりも魅力的。一方、気はいいんだけど乱暴者、リックのドライブシーンの疾走感とか、無茶なファイトぶりにニマニマしちゃう。
シャロンのマーゴット・ロビーが、伸び伸びと無邪気で、なんともいい。自分が出演しているスパイ映画を観に行って、観客に受けるのを喜ぶシーンが最高。ほかに西部劇好きのプロデューサーにアル・パチーノ、生意気な子役ジュリア・バターズら曲者がずらり。
本当は、古いテレビドラマや映画に詳しいと、面白いんだろうなあ。お説教好きのブルース・リーはわかるけど。カウンターカルチャー側の成功者スティーブ・マックイーンが、プレイボーイ・マンション(ヒュー・ヘフナー邸)のパーティーシーンにちらっと登場したりしてるほか、いろんな小ネタが散りばめられているみたい。

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