麦の穂を揺らす風
アイルランド予習シリーズの最後は、とびきり重い1作となりました。ケン・ローチ監督がアイルランド独立戦争と内戦の過酷さを、ドキュメンタリータッチで容赦なく描き、カンヌでパルム・ドールを受賞。
ロンドンで医師になるはずだったデミアンは、イギリス軍の暴力に耐えかね、IRAのゲリラ戦に身を投じる。恋人の弟の死、兄テディが受ける目を背けたくなる拷問… そして幼馴染の処刑で自ら手を下したことが、決定打となって一線を超えてしまう。
心を失っていくキリアン・マーフィーの、虚ろな目が凄まじい。独立戦争よりもその後の内戦のほうが、犠牲者が多いと言われる悲劇を、兄弟の対立という究極のかたちで突きつける。
女性運動家らとの論争や、神父とのやりとりのシーンなどに、植民地政策がもたらす負の遺産、問題の複雑さがずっしり。できるだけ多くの人に観てほしいかも。
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