« 2016年11月 | トップページ | 2017年9月 »

2017年8月

夜に生きる リブ・バイナイト

「ミスティック・リバー」のデニス・ルヘイン原作によるギャング映画。監督・主演のベン・アフレックが格好良すぎとはいえ、「ゴッドファーザー」風の大河ドラマ感と、禁酒法時代末期の米キューバ関係がよくわかって、かなり面白かった。機内で。

ボストンで暮らすアイルランド系のジョー(アフレック)は、警察幹部の父に反発してチンピラになり、ボスの女(シエナ・ミラーがはすっぱに)との命がけの恋がもとで、アイルランド系と対立するイタリアマフィアに身を投じる。フロリダ州タンパでラム酒密造ビジネスを任され、パートナーのキューバ女性(背中が綺麗なゾーイ・サルダナ)と運命的な恋に落ちつつ、ギャングとして成り上がっていく。
対KKK抗争、カジノ計画を巡るプロテスタント教会との摩擦をへて、大詰め、実力者となったジョーを排除しようとするボスとの、最終決戦に乗り込んでいくところは、お約束のヤクザ映画路線で痛快だ。

派手なドンパチ、暴力やロマンスがたっぷり。「アンタッチャブル」でお馴染みハットにキャデラックというダンディーさに、フロリダのラテンな空気も加わって格好いい。並行して、ジョーはハリウッドで夢破れた少女(エル・ファニング)の過酷な運命や、複雑な人種差別、事実上アメリカ支配下にあるキューバの状況にも心を寄せる。そういう社会派ドラマの要素が加わり、ラストには哀愁も漂う。さすがの上級エンタメ!といえましょう。
原作の映画化権を買ったディカプリオが製作。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

素晴らしきかな、人生 コラテラル・ビューティー

過酷な運命を受け入れ、生きていくことを描いた大人のファンタジー。ウィル・スミス、ケイト・ウィンスレット主演、「プラダを着た悪魔」のデヴィッド・フランケル監督。機内で。

ニューヨークのやり手広告マン(スミスが意外に渋い演技)は、幼い娘の死に直面して生活が一変、深刻な無気力に陥ってしまう。同僚のエドワード・ノートン(知的で屈折した造形がはまってる)、ウィンスレット、マイケル・ペーニャは、事務所を守るため辛い決断をして、探偵と小劇団の俳優たち(キーラ・ナイトレイ、ヘレン・ミレンら)に依頼し、ひと芝居うつが…

セントラルパークやブルックリンを背景に、静かながら意外性のある、なかなか凝ったドラマに仕上がっている。芝居を仕組んだはずの同僚たちも、それぞれ俳優に影響されて人生を変える一歩を踏み出すし、スミスが救いを求めるグループカウンセリングの主催者(ナオミ・ハリス)が誰だったのかを知って驚く。そして大詰め、俳優たちの正体にまたびっくり。

原題は「幸せのおまけ」の意味で、時に理不尽な悲劇は避けられないけれど、その後に遭遇するささやかな幸せを見逃さないで、という俳優の言葉からきている。苦くて現実的な、大人の人生訓。スミスがずっと熱中しているドミノの、壮麗なのに、あっさりと崩壊しちゃう姿が象徴的で巧い。崩れても生きている限り、また築くしかないのだ。
邦題が共通する1944年フランク・キャプラ映画とは、原題が違うから無関係なんだろうけど、イブの設定とか、ちょっと通じる要素があるのかな。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

美女と野獣

コクトーらが手掛けてきた18世紀フランス民話をベースにしたアニメを、ディズニー自ら実写化。「ディズニー・ルネサンス」の立役者アラン・メンケンによるディズニー節満載の歌が耳に残る。さらに蝋燭立てや食器、ナプキンが舞い踊るCGが美しくて、全編心地いい。「ドリームガールズ」などのビル・コンドンが監督。機内で。

しっかり者の村娘ベル(エマ・ワトソン、吹替は昆夏美)は野獣(ダン・スティーヴンス、山崎育三郎)の城に囚われ、心を通わせるようになる。野獣はエマの父(「ソフィーの選択」などのケヴィン・クライン、村井國夫)を傷つけ、村人を扇動する悪者ガストン(ルーク・エヴァンズ、四季出身の吉原光夫)と対決し、瀕死となるが、エマの愛を知って魔女(ハティ・モラハン、戸田恵子)は呪いを解く。
ハリー・ポッターシリーズのハーマイオニーだったワトソンが、美しく成長。野獣の表情が、きめ細かくリアルなのにもびっくり。エマの勝気な造形と、2人が打ち解けるきっかけが城いっぱいの本棚=知性であるところがディズニーらしいなあ。人は見かけによらないってことで。

魔法のせいで、ほとんど人間では登場しない野獣の家来たちが、吹替も含めて豪華。気障な蝋燭立ては「ムーランルージュ」などのユアン・マクレガー(成河)、恋人のはたきはググ・バサ=ロー(島田歌穂)、ポット夫人は「日の名残り」などのエマ・トンプソン(岩崎宏美)、衣裳箪笥はミュージカル女優オードラ・マクドナルド(四季出身の濱田めぐみ)といった具合。ほかに歌でアリアナ・グランデやセリーヌ・デュオンも参加。さすがレベル高いなあ。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

LOGAN/ローガン

ミュータントの闘いを描くマーベルコミック「X-メン」のキャラクター、ウルヴァリン(ローガン)を主人公にしたスピンオフ3作目。タイトロールのヒュー・ジャックマンと、プロフェッサーXのパトリック・スチュワートが役からの引退を宣言していて、マニア注目の作品らしい。ジェームズ・マンゴールド監督。機内で。

2029年、隠遁生活だったローガンとプロフェッサーは、謎の少女ローラ(ダフネ・キーン)を預けられ、ミュータントを武器として悪用する組織に狙われながら、北の国境にあるという子供たちの楽園を目指す。
シリーズの知識がないので、爪でザクザク切りまくる残酷過ぎる描写にびっくり。あまりに粗暴で冷酷。だからこそ、育ててくれたプロフェッサーや、自らの遺伝子から作られたローラ、道中で巻き添えになっちゃう田舎暮らしの一家に示す、不器用な愛情が染みるんだろうなあ。なんで放っておいてくれないんだよお、でも傷ついても傷ついても立ち上がるもんね!と、これは普遍的な極道映画の味わい。ロードムービーだし、1953年の西部劇「シェーン」へのオマージュがはまり過ぎで、このへんは大人向けだからこそ。

私にとっては「レ・ミゼラブル」のジャックマンが、17年も演じたというアンチヒーローのアクション、切なさを熱演する。ちっとも可愛くないキーンの存在感も凄い。むすっとしてたのに、話し始めるところとか。さらに我儘老人スチュワートは、病身という設定のため、77歳にして10キロ減量したとか。さすがシェイクスピア俳優。ミュータントという異分子迫害の要素が、ただのダーク・エンタメではないということか。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2016年11月 | トップページ | 2017年9月 »