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2016年8月

マネーモンスター

ジョディ・フォスター監督、ジョージ・クルーニー製作・主演のドタバタサスペンス。ウォール街批判、富の偏在批判を持ち込みつつも、荒唐無稽なエンタテインメント作だ。機内で。

マネー番組生放送中に、おちゃらけ司会者リー(クルーニー)の推奨で大損した男カイル(ジャック・オコンネル)が、爆弾をもって立てこもり、株価操作を暴けと迫る。大騒動のなか、リーと敏腕ディレクター・パティ(ジュリア・ロバーツが超人的活躍)は、投資会社アイビスで株価暴落を引き起こした巨額損失のからくりを追及する。

スピーディーな展開で、笑いも多く、徹頭徹尾ご都合主義。とはいえ時代を感じさせる要素はある。アルゴリズム取引、超高速取引、クオンツといった流行語を散りばめているだけでなく、システムのバグって説明で何もかも片付けてないか、とか、真相究明では「スポットライト」とまるで正反対に、ネット検索と映像ハッキングを駆使しちゃうとか。

こんなマネー番組が実在するのか知らないけど、クルーニーが決して正義の味方じゃなくて、むしろ頭空っぽみたいなキャラ設定なところが巧い。アドリブ満載、数秒で勝負する反射神経、視聴者の無責任な移り気にも、懲りない鉄面皮ぶり。なかなかシニカルだなあ。

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僕だけがいない街

大好きな藤原竜也主演の抒情SF。石狩のさびれた風情と、オーディションで選ばれたという子役の演技が素晴らしい。機内で。

三部けいの漫画を、ドラマ「チームバチスタ」シリーズの後藤法子脚本、「ROOKEIS」などTBSドラマの平川雄一朗が監督。
ピザ屋でバイトしている売れない漫画家・悟(藤原)は、災厄を防ぐまで意思と関係なく時間が巻き戻っちゃう特殊能力「リバイバル」を持つ。母・佐和子がかつて故郷で起きた連続少女殺人の真犯人に気づいたために殺されてしまい、悟は過去と現在を行き来しながら、犯人に立ち向かう。

正直、大詰めのパラレルワールドのつながりがわかりにくく、サスペンスとしての感興は今ひとつ。でも、身近な悲劇に関わり、観て観ないふりしないという勇気が、しみじみと響く。
なんといっても子供時代の悟を演じる中川翼と、悟が救う被害少女の鈴木梨央が、大人顔負けの演技力で、抜群の雰囲気を醸し出す。2人とも2005年生まれなんですねえ。先行き楽しみかも~ 気風のいい母・石田ゆり子、悟を信じるバイト仲間の有村架純も好感度大。ほかに、割と分かり易いキャスティングの及川光博、杉本哲太、安藤玉恵。贅沢なチョイ役で林遣都、福士誠治。

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スポットライト 世紀のスクープ

ジョシュ・シンガー、トム・マッカーシー脚本、マッカーシー監督のアカデミー賞作品賞受賞作。2003年ピューリッツァー賞をとったボストングローブ紙による、カトリック司祭の性的虐待と枢機卿の隠蔽体質に関する調査報道を描く。機内で。

登場人物が多く、淡々として地味。でも調査報道ってそういうものかも。ディープスロートとか胸のすくような駆け引きとかはなくて、裁判所や社の資料室でコツコツ資料を発掘し、被害者、加害者を訪ね歩いて辛い話を聞く積み重ねだ。
宗教組織や地域の有力者の妨害にあうけど、新任のユダヤ系編集長バロン(リーヴ・シュレイバー)が推進。911で一時停滞しちゃうあたりはスリリングだ。

俳優陣は手堅い。チームを率いるロビー(マイケル・キートン)や押しの強いマイク(マーク・ラファロ)、紅一点で共感力を見せるサーシャ(レイチェル・マクアダムス)、ちょっと控えめなマット(ブライアン・ダーシー・ジェイムス)の、迷いながらも結局はぶれない正義感が格好いいです。
格好いいだけでなく、かつて同じ新聞社が、情報を得ながら深く調べなかった、といった苦さにも触れていて公平な感じ。そのあたり、もっと描いてほしかったかな。

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スラムドッグ$ミリオネア

インド・ムンバイ(ボンベイ)のスラムに生まれた少年ジャマールが、クイズ番組で巨額の賞金を獲得するまで。目を背けたくなるような過酷な運命なんだけど、回想シーンを含めてとてもテンポが良く、どこか幻想的かつ知的で、乾いた希望が漂う。秀作だ。録画で。

コールセンターのお茶くみ青年ジャマール(デーブ・パテール、ケニア出身のインド系移民)は、無学なのにインド版「クイズ$ミリオネア」に出演して次々に正答。不正の濡れ衣をかけられ、警察で取り調べ、というか、ありえへん拷問にあう。偶然にも知っている問題が出てたんです、というわけで、壮絶な少年時代を語り始める。
イスラム教徒迫害で母を失い、兄サリーム(マドゥル・ミッタル)、ゆきずりの少女ラティカ(綺麗なフリーダ・ピントー、インド出身のモデル)と、浮浪児に物乞いさせる悪党ママンにつかまる。兄弟は逃げ出して、タージマハルで観光客をだましたり、ハンバーガー店で働いたりして生き抜く。
結局、ラティカが忘れられずムンバイに戻るが、ママンを撃ったサリームは身を守るため、裏社会のボス・ジャヴェドの手下になり、ラティカも差し出しちゃう。ひとりになったジャマールは再会を信じて、ラティカが好きなクイズ番組に出場。兄の犠牲、「ライフライン」の切ない電話シーン、そして感動のラストへ…

パテールの、頼りないんだけど、幼い恋を貫く一途さが全編を牽引。子供時代に臭過ぎる方法でサインをもらう設定のスター、アミターブ・バッチャン(本人は出てないけど)が、実際にクイズ番組の司会だったり、冒頭スーパーが入る4択の答えがラストに出たりと、仕掛けが多くて洒落ている。そしてエンドロールはインド映画へのオマージュ、運命の駅頭での怒涛のダンスシーンだ!

監督は2012年ロンドン五輪開会式の芸術監督を務めた、英国のダニー・ボイル。才人ですねえ。2009年アカデミー賞で作品賞はじめ8部門を獲得。

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