ルンタ
「蟻の兵隊」「先祖になる」の池谷薫監督による、140人を超えるチベットの焼身抗議を追ったドキュメンタリー。彼らはなぜ過酷な道を選ぶのか。ごく淡々としたタッチで、理屈っぽい説明は抑え目。もちろん映画を観ただけで、その心持がわかるわけではないけれど、砂漠の民とはまた違った草原と山岳の民の精神性を思う。劇場で。
案内役は中原一博。インド・チベット亡命政府の専属建築家であり、彼らの闘いの記録をブログで発信している。映画前半はインド北部のダラムサラ、中原設計の学習・就労支援施設「ルンタハウス」を中心に、亡命チベット人たちの壮絶な人生の証言を綴る。
圧巻は中原と共に、焼身の現場を訪ねていく後半だ。遊牧民の暮らしと、イケメン若者の眼力の強さ。色とりどりのタルチョ―(祈祷旗)が風にたなびいて鳴らす、ルンタ(風の馬)の足音。山岳にこだまする祈りの声と、草原にかかる雄大としか言いようのない虹。そして輪廻の思想からすべてを受け入れてなお、屈しない心というもの。
これほどの軋轢がありながら、寺院にけっこう大勢の中国人観光客がいることに驚く。
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