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2015年10月

ルンタ

「蟻の兵隊」「先祖になる」の池谷薫監督による、140人を超えるチベットの焼身抗議を追ったドキュメンタリー。彼らはなぜ過酷な道を選ぶのか。ごく淡々としたタッチで、理屈っぽい説明は抑え目。もちろん映画を観ただけで、その心持がわかるわけではないけれど、砂漠の民とはまた違った草原と山岳の民の精神性を思う。劇場で。

案内役は中原一博。インド・チベット亡命政府の専属建築家であり、彼らの闘いの記録をブログで発信している。映画前半はインド北部のダラムサラ、中原設計の学習・就労支援施設「ルンタハウス」を中心に、亡命チベット人たちの壮絶な人生の証言を綴る。
圧巻は中原と共に、焼身の現場を訪ねていく後半だ。遊牧民の暮らしと、イケメン若者の眼力の強さ。色とりどりのタルチョ―(祈祷旗)が風にたなびいて鳴らす、ルンタ(風の馬)の足音。山岳にこだまする祈りの声と、草原にかかる雄大としか言いようのない虹。そして輪廻の思想からすべてを受け入れてなお、屈しない心というもの。
これほどの軋轢がありながら、寺院にけっこう大勢の中国人観光客がいることに驚く。

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ガッチャマン

人気俳優を揃えたアニメの実写版。最近こういう企画が多いのは、往年のアニメファンの子供連れと、若手スターのファンとで、一定の客層が見込めるからなのかな。
確かに主要キャストには色気があるものの、人間関係が妙に子供っぽくてカタルシスに乏しく、残念。
原作は劇画タッチの絵で、今にして思えば差別されるものの苦しみをシリアスに描いていて大人っぽい印象だっただけに、もっと脚本を練ってほしかったなあ。佐藤東弥監督。録画で。

主眼は任務至上主義だった松坂桃李のケンが、仲間愛に目覚めるところなんだろうけど、綾野剛のジョージ、なんとベルクカッツェになっちゃった幼馴染みのナオミ(初音映莉子)との3角関係、そして回りでウロウロしているジュン(剛力彩芽)のジェラシー、というシーンが延々と続いちゃう。地球を救うにしては、どうにも小さい。竜の鈴木亮平は、朴訥単純一本やりだし。
ギャラクターから亡命してくるイリヤの中村獅童が、さすがの怪しさだ。

関係ないけど、映画をきっかけに関係サイトを読んだら、原作ではケンらは弱冠16歳とか18歳。しかもテストパイロットとかスナック経営(!)で自活しているっていう設定だったんだなあ。今さらながら、実は働く若者たちの物語だったとは。大人っぽいはずです。

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