フライト
ロバート・ゼメキス監督、ジョン・ゲイティンズ脚本。デンゼル・ワシントン主演。試写で。
制御不能に陥ったローカル便ジェットを、奇跡的に不時着させたウィトカー機長。確かに腕はいいが、実は普段から素行には問題があった。ヒーローと持ち上げられた後に、疑惑が浮上する。
とにかく導入部分の事故シーンがとんでもなく怖い。「フォレストガンプ」の監督とあって、安っぽいCGを感じさせない大迫力で、手に汗握る。
そして事故の後は一転して、むしろ淡々とした人間劇が展開し、深みがある。事故の真相を巡って、からみあう航空会社や組合の思惑、家族の情愛。登場人物誰もが、単純な悪人でも善人でもない。知的イメージをかなぐり捨てた名優デンゼルはじめ、弁護士役のドン・チードル、チャーリー・アンダーソンらの演技に説得力があって、お説教臭くない。特にウィトカーの悪友ジョン・グッドマンの、あっけらかんとした怪しさが、テーマの深刻さと絶妙のバランスを醸し出す。
結局、自分の主人は世間でも義理がある仕事仲間でも家族でさえもない。自分なのだ。遠くの空から聞こえてくる、航空機の飛行音が胸にしみるなあ。
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