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2008年11月

今宵、フィッツジェラルド劇場で

ロバート・アルトマン監督。メリル・ストリープ、ケヴィン・クライン、ギャリソン・キーラー。録画で。

ラジオ局が買収され、打ち切りとなるカントリーミュージック番組の最後の公開生放送をめぐる群像劇。

巨匠アルトマンの遺作。実在のラジオ番組を舞台に、番組中のキャラクターを登場させたりした凝った作りだ。ラジオ局を買収する企業の重役の文化に対する無理解ぶりなど、皮肉も散りばめられているけれど、全体にコミカルで、肩に力が入っていないのが心地いい。

全編をカントリーミュージックが彩る。日本で言えば演歌みたいなものでしょうか。古くさくて野暮ったくて、でも変わらない温かさみたいなものが鳴り響く。思わずメリル・ストリープと一緒にハミングしちゃいますね。
謎の白いトレンチの女や、企業重役が登場するシーンの、深い陰影も目を引きつける。死からは誰も逃れられないように、移ろいゆく時代は止められない。でも、ひとりぼっちではないのだから、笑ってたくましく生きるのだ。

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「エリン・ブロコビッチ」

スティーブン・ソダーバーグ監督。ジュリア・ロバーツ。録画で鑑賞。

専門の法律知識をもたない一介のシングルマザーが、大企業を相手取った訴訟に乗りだす。

企業と戦う訴訟の物語って、ハリウッドには結構あるけれど、本作は意外にあっさりしている感じ。訴訟の苦労や曲折よりは、子供の成長に象徴されるエリン自身の生命力、そこから生まれる説得力を観る映画ではないか。

映像としては、裁判所の青、原告の居間の黄といった、色の使い分けが面白かった。それから、冒頭に登場する実在のエリン本人がすごくきれいで、妙に納得しちゃいました。

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ファイト・クラブ

デヴィッド・フィンチャー監督。ブラッド・ピット、エドワード・ノートン。録画で。

快適な消費生活を送りながら不眠症に悩む主人公は、ある男との出会いをきっかけに殴り合いの魅力にとりつかれていく。

主人公の何不自由ないはずの生活が、どんどん変化していく前半の強引さは痛快。演技派のノートンと、ブラピの問答無用のセクシーさという俳優対決も見応えあり。でも実は二人は、というあたりで椅子からずり落ちましたね。

主人公が「ナレーター」として紹介されているとか、いろんな短い隠しショットがあるとか、とても作り込んである。一度見たら忘れがたい作品ではあります。

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「トランスポーター」

ルイ・レテリエ、コリー・ユン監督。ジェイソン・ステイサム、スー・チー。録画で鑑賞。

製作・脚本にリュック・ベッソンが参加している痛快アクションの佳作。

元特殊部隊員のフランクは、高額の報酬で危ない荷を届けるプロの運び屋。ある日、自ら定めたルールを破って荷を開けたために、犯罪組織に命を狙われる。

初っぱなから、強烈でユーモアあるカーチェイスが何ともおしゃれ。なにしろ舞台が南仏だもん。やっぱりハリウッドだけじゃ、こうはいかないだろうって感じ。
フランクの愛車、黒いBMWが狙われるシーンは、お約束というか、「絶対くる」ってわかっていたけど、やっぱりのけぞった。それから先は、燃える家の地下からの潜水とか、油まみれの殴り合いとか、アイデアも豊富で、バックに流れるラップなんかとのアンサンブルも巧い。まあ、お話は結構脳天気なんだけど。

続けて観たステイサム、軽快だなあ。台湾出身のスー・チーもチャーミングでした。満足。

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「もののけ姫」

宮崎駿脚本・監督。松田洋治、石田ゆり子。録画で。

室町末期、たたら製鉄集団と森の獣、そして獣として生きる少女シンとの闘い。

アニメの可能性を見せつけられる一本。憎しみに絡め取られるイメージなどが凄烈で、画面に得体の知れない情熱があふれ、深刻で残酷な話だけれど、思わず見とれてしまう。

深い照葉樹林を舞台にしていることから、公開当時、テーマは環境破壊だと言われていたようだ。しかし、2001年の9・11を経た今では、むしろ異質なものとの軋轢や、憎しみと死の連鎖の重さ、愚かさ、拒絶された者の痛みを掘り下げているように思える。こういうふうに時代の流れに耐えてイメージを増幅させる強さ、普遍性こそが、ファンタジーの醍醐味なのだろうと、改めて思う。

関係ないけど、たたら製鉄の連想から、「赤朽葉家の伝説」(桜庭一樹著)を読んでいるとき、もののけ姫のイメージ、スピード感みたいなものが浮かんで面白かったなあ。

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エニイ・ギブン・サンデー

オリヴァー・ストーン監督。アル・パチーノ、デニス・クエイド。録画で。

プロ・アメリカン・フットボールを舞台にした内幕もの。

迫力あるゲームの映像が非凡。善悪ないまぜの人物群像、特に癖のあるコーチ、アル・パチーノの造形が魅力的。それだけに、やっぱりラストがどうも… この監督には何故かいつも、もう一歩、のところで共感しにくいなあ。

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デス・レース

ポール・WS・アンダーソン監督・脚本。ジェイソン・ステイサム。試写会で。

近未来の大不況に陥った米国。民営化された刑務所が「興業」として催す死のカーレースに、元レーサーが巻き込まれる。

思考停止、説明不要の高速バイオレンス映画。主役は俳優陣というより、鉄板でかためた車だ。全編猛スピードで走り、機関銃みたいなので撃ち合い、宙を飛び、大爆発する。テレビ中継とかのシーンはゲームっぽいし、残酷だけど、とてもテンポがよくて脳天気なので、暗い気分にならない。観た後、くれぐれも車を飛ばさないように、と思っちゃった。ラストの「注意書き」に注目。

ステイサムは声がいいな。セクシー担当のナタリー・マルティネスが可愛いし、脇のジョアン・アレン、イアン・マクシェーンも渋くて結構はまってた。

オリジナルは本作の製作総指揮、ロジャー・コーマンの75年製作「デスレース2000」。B級SFアクションとしてカルト的人気だとか。観てみたいなあ。

試写会「デス・レース」  ITニュース、ほか何でもありbyKGR

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「アメリ」

ジャン=ピエール・ジュネ監督。オドレイ・トトゥ。録画で鑑賞。

モンマルトルを舞台にした、空想好きな娘アメリの不思議な日常。

ヒロインの切りそろえた前髪と、細い足首が、いたずらっ子らしい雰囲気をよく醸していて魅力的。こっそり人を幸福にする趣味っていったって、ほとんどいたずらだよね。

パリの映像も美しい。好きな人とすれ違う昼下がりの広場の、オレンジがかった光、そして伸びた人の影が、妙に懐かしい感じでわくわくする。映画を観て以来、駅とかの証明写真ボックスが、なんだかロマンチックなものになっちゃいましたよ。

可愛らしいだけでなく、シュールな味わいもある。人とわかり合うのは難しくて、とても手間だけれど、手間をか ける甲斐はあるのかも、と思わせる一作。

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「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを閉鎖せよ!」

「踊る」劇場版第2作。本広克行監督、君塚良一脚本。織田裕二。録画で。

テレビシリーズのファンで、劇場版の第1作も結構楽しんだので、今作は爽快感がいまひとつ、と思っちゃったな。「砂の器」へのオマージュとか、相変わらずの遊び心は好きなんだけれども。

2004年に亡くなったいかりや長介さんの台詞が、遺言めいていて味わい深い。

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「コンフェッション」

ジョージ・クルーニー監督デビュー作。サム・ロックウエル。録画で鑑賞。

70年代テレビ界の敏腕プロデューサーが、実はCIA工作員だったと告白(コンフェッション)した伝記の映画化。

クルーニーへのご祝儀ということか、「オーシャンズ」の面々が応援で登場し、すごい豪華キャストだ。凝った映像も印象的です。冷蔵庫の陰影とか。

それなのに、とても地味に仕上がっているのが貴重な感じ。もとになった伝記の内容については、疑問符がついているらしい。映画はその真偽よりも、今日に至るテレビのバラエティー番組の原型を作った「ゴングショー」のホストの小心さ、下世話さや、子供の頃から傷を抱えていたということ。そして成功すればするほど、虚飾とストレスに追いつめられていく心理が、うまく描かれていたと思う。

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少林サッカー

チャウ・シンチー監督・脚本・主演の香港映画。録画で。

特撮・CGを駆使し、燃えるボールなど劇画的シーンが連続の、はちゃめちゃサッカー映画。個人的には少し暴力的過ぎ。でも、ダンスシーンはよかったな。

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「宇宙戦争」

スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演。劇場で。

GHウエルズ原作のSF。1938年の、あまりに有名なラジオドラマ版なども取り入れいているそうです。

評判通り、とにかく怖かった。正当派パニック映画といえるのではないでしょうか。特に音。雷などの大音響も、劇場の後方から聞こえる、かさこそ動く小さな気配も。
それから冒頭、「あいつ」が地下から登場するときの、普通の下町が粉々に破壊されるシーン。絶望感が圧倒的だ。客席にいて、上映が始まる前は結構賑やかだったグループも、息をのんでましたね。

物語は、とにかく普通の庶民である一個人が逃げまくるだけ。そこが、私としては好感がもてた。パニック映画なんだけど、ありがちな苦悩する大統領も、学者も、祖国愛も人類愛も皆無。いったい何が起きているのかという説明部分さえ、主人公が逃げながら聞く風評のたぐいだけだ。
そういう意味で、大予算の娯楽作としては地味な印象だし、何かもうちょっとドラマの伏線が欲しかった気もするけど、「9・11」を意識したらしい、謙虚さを感じた。

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「ミスティック・リバー」

クリント・イーストウッド監督。ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコン。録画で。

ある殺人事件を機に交錯する、幼なじみの男性3人の人生。疑念と後悔が絡み合う重厚なサスペンス。

評判通り、という印象。登場人物が階段の上と下とで会話を交わすときの微妙な心の揺れとか、吸血鬼映画を観る場面の異様さなど、印象的なシーンが目白押しだ。ショー ン・ペンはデニーロばりの屈折した演技。ケヴィン・ベーコンも、なかなか渋かった。

幕切れの有名なパレードの情景はもう、よくできた舞台劇のよう。人の世の不条理、不公平を描き、暗い割に長さを感じさせない。けれど、胸にざわざわしたものが残って、全然すっきりしない。まあ、それこそが狙いなんだろうし、決して嫌いじゃないけど、根が単純な私としてはちょっと苦手な一本だったかな。

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「RED SHADOW 赤影」

中野裕之監督。安藤政信。録画で。

昔懐かしい「仮面の忍者 赤影」を原作にしたアクション時代劇。

前半のCGを使ったアクションシーンは、ゲーム画面のようであまり新鮮ではないと思ったけれど、後半はどんどん忍者映画らしくなくなってしまって、意外に楽しめた。安藤政信のピュアさが全開、村上淳とのコンビの、ある意味古典的な青春映画。そもそも仮面つけてないし。

藤井フミヤ、椎名桔平、吹越満と脇役陣が豪華。特筆すべきは、出演もしている布袋寅泰ギターのバラード。圧倒的迫力で流れる。本当に、映画音楽が似合う人です。

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「サイン」

シックス・センスのナイト・シャマラン監督。メル・ギブソン。録画で鑑賞。

「宇宙戦争」陰鬱版。ミステリーサークルなど、元牧師一家の周囲にあらわれる様々なサインは、果たして何を意味するのか。

ストーリーは単純だと思うのだけど、何故か引き込まれる。音楽が少ないこと、目を離しがたいカメラ目線、それから、ところどころの ユーモアのおかげか。

信仰とはまた別の意味で、「世界のすべては、何かの伏線である」。このテーマは、思えば様々な作劇の基礎かもしれない。片田舎に息づく人生もまた、十分にドラマを含んでい るという感触が、妙に観る者の胸に届く。

賢い兄と勘の鋭い妹、特に「水が汚染されている」という妹の台詞の繰り返しが効果的だ。絶望に向かい合うということが、意外に真摯に描かれていると思った。

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「バニラ・スカイ」

キャメロン・クロウ監督。トム・クルーズ、ペネロペ・クルス。録画で。

やはりペネロペが主演したスペイン映画「オープン・ユア・アイズ」のリメイク。ある交通事故が運命の境目となって、転落していく男の苦悩。

往年の名画へのオマージュや、ロックの名曲など、イメージ満載で丁寧に作り込まれているのはわかるのだけれど、今ひとつ意外感がなく、ピンとこないのはなぜだろう。

そんななかでペネロペ・クルスの「目」が印象的だ。英語がなんとなく、たどたどしいからこそか、特に泣き笑いのような葬儀シーン。

夢と現実が入り乱れる複雑なサスペンス。たぶん、どこかに「ストーリーに入り込むポイント」があり、そこを逃しちゃいけないんだろうな、と思いました。

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「シャイニング」

スタンリー・キューブリック監督。ジャック・ニコルソン。録画で鑑賞。

いうまでもない名作。スティーブン・キング原作の、ロッキーのホテルに封じ込まれた一家の恐怖を描くホラー。

うー、怖いよお、と思いながら食い入るように観てしまう。因果関係とか理屈とか、いろいろ解釈はあるのだろうけど、それより何より、「とりつかれる」「あやつられる」「迫り来る」という感じの、乾いた手触りが凄い。私の場合、不気味な効果音の力が大きかったように思う。

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「ラブ・アクチュアリー」

リチャード・カーティス監督・脚本。ヒュー・グラント。録画で。

クリスマスのロンドンを舞台にした、9ストーリーの恋愛群像劇。豪華キャストで登場人物が19人だとか。なんだかごっちゃになって、ストーリーの1、2個はよくわからなかった。あはは。

でも、首相も大統領も大物ロックスターも洒落のめし、ハッピーエンドだけでなく苦い失恋もあって、大人の雰囲気がなかなか。「ビーン」と「ブリジット・ジョーンズ」の脚本家だから当然かな。純ハリウッドとはちょっと違う感じ。そして、ヒュー・グラントはちゃんとヒュー・グラントでした。

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「ソードフィッシュ」

ドミニク・セナ監督。ジョン・トラボルタ、ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー。録画で。

製作にジョエル・シルバーが名を連ねる犯罪アクション。冒頭の大爆破や銃撃戦など、あまり必然性の感じられないド派手なシーンの連続だ。シーンとかセリフとかに、それぞれ「元ネタ」がある感じで、それはそれで結構目が離せないのだけど。

ソードフィッシュ(めかじき)というのは、思いこみを利用して間違った方向に誘導する、という意味があるそうです。というわけで善玉悪玉入り乱れた、ひねったストーリーなんだけど、個人的には引き込まれ損ないましたぁ。謎いっぱいのリーダー、変な髪型のトラボルタの存在感はさすが。なんかもう、登場シーンからして「食わせもの感」満載です。

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ジョゼと虎と魚たち

犬童一心監督。妻夫木聡、池脇千鶴。録画で。

田辺聖子原作の恋愛映画の佳作。地味だけど。

乳母車に乗って登場するヒロイン、池脇千鶴が熱演だ。当たり前のことを当たり前に遂行していく負けん気と、負けん気をストレートに表す関西弁。対する妻夫木くんの普通さ、もてる男が意図せずに示してしまう狡さみたいなものが、絶妙だ。この二人だから表現できた、恋の高揚と切なさがある。

物語の最後で、ジョゼの強い微笑みが爽やかな余韻を残す。どんなときも、正しくておいしい朝ご飯を作る。そういうジョゼの、生きていく「芯」のようなものが感じられるんだなあ。この芯こそが、そもそも恋の発端だったのだろうし、また結局、若い恋心は移ろってしまっても、確かに残っていくのだろう。

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「CUBE」

ヴィンチェンゾ・ナタリ監督。モーリス・ディーン・ウィント。録画で。

カナダのカルト的人気を誇る映画。危険な罠がいっぱいの、立方体の迷宮に閉じこめられた男女6人の脱出劇。

キューブの意味を説明するでもなく、数学的パズルの暗号を解く快感に興じるでもなく、ひたすら不条理な状況のみが突きつけられる。緊張感というか、観ているうちに酸素不足に陥るような感じは確かに斬新です。
もっとも映画に何らかのカタルシスを求める私としては、ちょっと辛かったかも。

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「シンデレラマン」

ロン・ハワード監督。ラッセル・クロウ、レニー・ゼルウィガー。劇場で。

大恐慌時代、貧しさから闘いの道を選んだ実在の人物を取り上げた直球ボクシング映画。
自助努力と家族愛。ひとつ間違えると鼻につきかねない「アメリカの良心」を、主演の二人が、無骨に演じ切る。やっぱり才能がある人たちというか、うまいよね。それからセントラルパークがダンボールハウス街になってしまう、恐慌の現実が迫力。最近は、ひょっとしたら遠い話ではない感じだけに。子役の可愛さも光ってました。

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「アポロ13」

ロン・ハワード監督。トム・ハンクス、ケヴィン・ベーコン。録画で。

元船長の著書をもとに、アポロ13号の爆発事故を描いたドラマ。

有名な発射時のCGや、航空機内で実際に作り出したという無重力シーン、宇宙船の小窓から船体外観につながるカットなど、凝りに凝った映像に見所が多 い。無重力訓練用の飛行機を600回も飛ばしたって、凄い情熱。

いうまでもなく舞台設定は、宇宙空間と国家プロジェクトという壮大なもの。けれども、テーマは一貫して「家に帰りたい」という、極めて小市民的な願望のように思える。あえてこの、普遍的な心情に焦点を絞り込んだ手腕が心憎 い。
なんというか、ヒロイズムの押しつけがましさが少ないし、トム・ハンクスの持ち味も生きているんじゃないか。この人は大役をこなしつつ、いつも類い希な「普通さ」を漂わせてるんだよね。ハリウッドの役所広司と呼ぼう。

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「チャーリーとチョコレート工場」

ティム・バートン監督。ジョニー・デップ。劇場で。

ロアルド・ダールの児童文学が原作のファンタジー。「えー、これが児童文学なのー」とのけぞっちゃうくらい、映像のけばけばしさと、ちょっとブラックな味つけがたまらない。

ジョニー・デップがまたしても怪演! 天才ショコラティエで、孤独で、愛を知ら ないチョコレート工場長のウィリーは、まるでマイケル・ジャクソンのよう。全然無垢じゃない変な子ども達も、現実にいそうに思えてくる。

そして何より、工場の従業員で、全員同じ顔をしている小さい「ウンパ・ルンパ族」のダンス。「ムーラン・ルージュ」の「ライク・ア・ヴァージン」のシーンに匹敵する楽しさです。ほかにも賢いリス達、 名画のパロディーなど、ネタが満載。

お話としては、ダイジェストにしてしまうと家族愛を描いていて、至極まっとうなんですが、そういう本筋より、イメージの奔流をエンジョイした。ウォンカバーが欲しいよぉ! 

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「Mr & Mrs Smith」

「ボーン・アイデンティティー」のダグ・リーマン監督。ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー。録画で鑑賞。

ひと言で言ってしまうと、壮大な夫婦げんかの映画です。公開時の評判通り、洒落てて笑えて痛快だった。

腕利きの殺し屋夫婦が主人公。辻褄という点では、いろいろと突っ込みどころがありそうだけど、私としては、こういうの好きです。暴力を描いて、暴力を感じさせない、というか。映画じゃないと、なかなか味わえない感触ではないでしょうか。

それから、壮大な嘘を力一杯みせてくれるスターのオーラ。存在自体が非日常だなー。「ブラピはオバマの遠い親戚」という話も凄い。「9世代離れたいとこ」って、遠すぎる気もするけど。

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「M:i:Ⅲ」

J・J・エイ ブラムス監督。トム・クルーズ。試写会で。

007シリーズみたいに、この上なく痛快であることを宿命づけられている「ミッション・インポッシブル」映画化の3作目。

子供心に、テレビシリーズは巧妙な騙しのスリルが醍醐味だった印象がある。そういう先入観からすると、バチカンでのすり替わりシーンが、いかにもミッション・インポッシブルで、ありえねー、と拍手。
そのほかの見所としてはヘリ対決、大爆発など大がかりなアクションが満載で、不死身のトム・クルーズが宙を飛びまくる。舞台も世界を駆けめぐっていて豪華だ。

人間ドラマとか、スリルの要素は薄いものの、ハリウッドの「これでもか」という心意気というか、スター魂を楽しめる。

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「LIMIT OF LOVE 海猿」

羽住英一郎監督、福田靖脚本。伊藤英明、加藤あい。劇場で。

漫画を原作とする、海上保安官ドラマ。ほぼ同じキャストの映画1作目、ドラマも観ており、安心して鑑賞。

職業をめぐる苦悩や使命感が、シリーズの一貫したテーマなんだけど、この映画版では大型フェリーの座礁事故に的を絞ったのが良かった。いわば正調パニック節。爆発、浸水などがなかなか迫力の映像でした。
私としては、こういうものに、ひねりやリアルは求めません。「危機的状況でのプロポーズ」も、この際、待ってました!って感じ。

相変わらずヒーロー過ぎない、頼りなさげな伊藤英明がいい。加藤あいも結構好き。老けないなあ、この人。

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武士の一分

山田洋次監督。木村拓哉、壇れい。試写で。

山田監督の、藤沢周平原作の時代劇三部作の第三作。元毒味役で失明した新之丞が、「武士の一分」をかけて果たし合いに挑む。

ストーリーは意外にシンプルで、結構とんとんと展開する。筋よりむしろ、つつましい日常の細かい描写が印象的。だから、その日常に割り込む不穏な雨とか、いらいらする虫とか、クライマックスの決闘場面の風とかの細部がリアルだ。なぜ、小さな幸せを守ってくれないんだよう! それからとにかく壇れいが綺麗でしたねー。

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「ソウ」

ジェームズ・ワン監督。録画で。

あまりにも有名な低予算スリラー。個人的には「セブン」と双璧をなす、「史上最高に後味の悪い映画」です。

まず発想の残酷さや、細かいカットで惹きつけ、さらに登場人物の不信と絶望で、観る者を揺さぶる。ここまではある程度、スリラーの常套手段なのだろうけど、やっぱり不条理で衝撃的なラスト、あのワンシーンの「絵」の強烈さは類い希。非常に映画的だと思った。

それにしても、08年時点で5作まで続いているのが驚き。好きな人が多いんですねー。

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「ドリームガールズ」

ビル・コンドン監督。ジェイミー・フォックス、エディ・マーフィー、ビヨンセ。試写で。

モータウンとシュープリームスをモデルにしたマイケル・ベネット演出ミュージカルの映画化。
黒人音楽をポップスとして広めたモータウンの成功談と、その立役者たちの心のあやを描く。ストーリー自体にそれほど膨らみはないものの、俳優陣がみな歌がうまくて、私のようなR&B好きにはたまりません。シカゴとか、ミュージカル映画を観るといつも思うんだけど、ハリウッドスターは本当に芸達者ですな。

特に、話題になった新人ジェニファー・ハドソンの歌唱は、迫力満点でさすが。ビヨンセ・ノウルズも当たり前ながら綺麗だし。「ワンナイト・オンリー」とかバラードとか、貫禄ですねえ。それから60年代、70年代のキッチュなファッショ ンも楽しかった。

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「真夜中の弥次さん喜多さん」

しりあがり寿原作、宮藤官九郎監督。長瀬智也、中村七之助。録画で。

時代劇コメディー。恋人同士である長瀬と金髪七之助の東海道の旅、なのだが、とにかくはちゃめちゃで気持ち悪い。特に七之助さんが洒落にならない危うさ。とはいえ、役者陣は達者です。これを観て以来、荒川良々のイメージが巨大な仏像みたいになっちゃいましたよ。

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「亡国のイージス」

坂本順治監督。真田広之、佐藤浩市、中井貴一、寺尾聡、勝地涼。録画で。

福井晴敏原作の軍事アクション。原作は護衛艦とかミサイルとか、情報がいっぱい詰まっていた。当然ながら、映像では情報部分は省略しているので、だいぶ印象が違う。

まあ個人的には、そういう情報の有り難さはよくわかりませんが、ではアクションが派手かというと、そうでもない。俳優陣の存在感はさすがですね。真田、佐藤、中井の鉄板3点セット。中井貴一は、悪役ができる貴重なスターだと改めて思いました。

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